解放され1人暮らしを楽しむわがままマダム
ひとり暮らしの老女のステレオタイプには、孤独、貧乏というイメージがあるかもしれないが、実際はむしろ人生を悟り、寂しいなんて考える暇もない、自分を楽しむ「わがままマダム」もかなり存在することが分かる。
幸子さん(仮名)は今年71歳で滋賀県在住。夫が5年前に亡くなり、他の家族とほぼ付き合いのないひとり暮らしの老女である。幸子さんは専業主婦50年をやってきた。夫が肺がんで5年前亡くなり、当時は喪失感に襲われ、非常に暗鬱な時間を過ごしたが、ある日、みんな死ぬし、明日何が起こるかわからないので、今だけを楽しもうと悟った。今はいろいろなサークルに入り、レクリエーションやおしゃべりを楽しんでいる。
幸子さんは今とても解放された気分で一人暮らしを楽しんでいるが、不安はどうしても消えない。もし急に病気になって、そのまま寝たきりになり、孤独死したらどうしようと、考えるだけで落ち着かない。
幸子さんは旅行が大好きで今は月1回以上出かけている。旅行の決め方について、まず旅行会社から送られてくるツアーパンフレットを見て、行ってみたいところを見つけ、ネットで調べて予約。一緒に旅行に行ける人が少ないので、ほとんど一人で行っている。ツアー旅行がとても便利だ。わがままマダムにとって、旅行は世間とのつながりの一つで、旅行を通して生きがいを感じている。シニアは、旅行そのものではなく、ツアー仲間、現地の人々との楽しい交流に高い価値を見出している。
買い物について、最近ネットで注文するようになった。便利だと言いつつ、本当はモノをみて買い物をしたいようだ。もっと高齢になると、やはり誰かに買い物を手伝ってほしいと思っている。これから車を運転する女性が増えるようだが、やはり体力が落ちていくので、買い物をどうサポートしてもらうかが重要だろう。
食については、ほとんど一人で食べる。量より質にこだわり出した。そして、特に牛乳・ヨーグルトやジュースを選ぶ時、本当に効果かあるかわからないが、栄養を意識したネーミングに惹かれて買う。以前は夫の食を配慮していたが、今は一人なので、夫が好きだった揚げ物もなくなり、一人分の惣菜を買い、レンジでチンする手間のかからない料理が増えた。一人の食生活はどうしても手を抜くし、「中食」も利用しているが、満足できていない。
また、今は年金生活で決して裕福とは言えないが、今まで散々節約してきたので、今はもう無理をしたくないと思っている。
とにかく夫の健康に気を配る自由夫婦
和子(仮名)さんは、東京に住んでいる73歳の女性である。外国人に日本語を30年間教えてきた。音楽・映画、女子会を楽しむことが生きがいである。夫と同居しているが、夫が定年退職した日から不幸が始まった。
長年一人で子育てし暮らしてきたので、急に夫がいつも側にいるようになると、趣味も生活習慣も違い、ストレスを感じるようになった。そこで、割り切ってお互いに好きなようにしようと、自由夫婦になることを決めた。
平日の夕飯は一緒に食べて、まれに一緒に買い物に出かける以外は、ほとんどバラバラだ。とはいえ、夫の介護は自分でやらないといけないので、とにかく夫の健康に気をつけている。
2年前、夫の発病前の兆候に気づき、救急車を呼び早く処置したおかげで、夫は半身不随にならず済んだ。病気に関する知識を得ておいてよかったと思う。自由夫婦は元気なうちは別行動だが、いざというときはお互いに面倒を見る立場なので、健康に人一倍気を使っている。