「お節介」が得意な、弁当の宅配サービス

高齢者専門の宅配弁当事業を行う「宅配クック123(ワン・ツゥ・スリー)」。1999年に事業をスタートし、現在47都道府県に約330のフランチャイズ(FC)店と一部直営店を構える。

「普通食」「健康ボリューム食」「カロリー・塩分調整食」「たんぱく・塩分調整食」「透析食」「消化にやさしい食」「やわらか食」「ムースセット食」の8種類が昼用・夕食用と日替わり。ごはんの有無も含めて選ぶことができ、1食から配送料無料で配食される。

右上は「消化にやさしい食」(おかずのみ777円、ごはん付き820円)、右下は「普通食」。ごはんを左手に持って食べる習慣のある高齢者のため、ごはん容器を別にしている。ほか、歯の弱い顧客向けの「やわらか食」は、見た目の形を残して食感だけ特殊製法で軟らかくするなど、食べる楽しみにもこだわっている。

「ケアマネジャーからお客様をご紹介いただくことがほとんどということもあり、お客様の平均年齢は80歳以上で、要支援~要介護1くらいの方が中心です。月間の配食数が約210万食で利用者数が約7万人なので、1人あたり月に30食ご利用いただいている計算になります」とは、FC運営会社であるシニアライフクリエイトの菅原邦寛さん(以下、発言は菅原さん)。

最大のこだわりは「弁当を手渡しして安否確認をする」こと。宅配弁当は玄関前などにボックスを設置して置いていくことが多いが「どうしてもというお客様以外は、手渡しをお願いします。見守られている感じが強く出てしまうとお客様の自尊心を傷つけかねないので難しいのですが、頻繁に伺うことでお客様自身も配達員を楽しみに待ってくださるようになります」。

スタッフは認知症に対する知識を習得

同社ではほとんどの配達員、本部スタッフが認知症サポーター養成講座を受講し、認知症に対する一定の知識を持っている。そのため、話し方や服装など、ちょっとした異変に気付きやすく、認知症の傾向が少しでも見られた場合は、すぐに報告ができるという。

また、年に数回、認知症予防に効果があると言われるイラスト「ミッケルアート」を見せながら、普段より長めに会話をしたり、自慢話を促すために土用の丑の日はいつもと同じ価格で国産鰻を提供したり、唾液の分泌を促すための口腔体操のDVDを配るなど、健康寿命を延ばすための各種「お節介」を行っている。そしてこの「お節介」は、配食する弁当にも見てとれる。

弁当はごはんを左手に持って食事しやすいよう、おかずと別盛り。ふたは片手でも開けやすい仕様だ。角の丸い容器でおかずをスプーンですくいやすくするなどのこだわりも。また、凍結含浸法という特許技術を用い、形を残したまま食材を軟らかくした「やわらか食」や、消化器系などの手術後の数週間の食事のために「消化にやさしい食」を用意するなど、他社が手を出さない分野にまで対応している。

提携工場で食材の調理、加熱したものが冷凍され、自社倉庫から全国の店舗に送る。各店舗ではそれを湯煎や電子レンジで解凍し、器に盛りつけて配食する。ここまではセントラルキッチンの調理工程と大差ないが、「アレルギー対応の代替品への変更は各店舗で行います。また、噛む力が弱い方のために『刻み食』の対応もします。商品を一つ一つはさみなどで刻むのですが、ご要望により、粗刻み、通常刻み、極刻みなどに分けて切ります。ごはんをお粥に替える際も、通常のお粥、三分粥、七分粥と水加減を変えています」。

提携工場で調理の際も、軟らかめの調理法にしたり、噛む力が衰えないようにあえてかぶりつかせるサイズにしたりといった工夫をしているが、さらに各店舗で顧客一人一人に合わせたカスタマイズを行っているのだ。

「店舗では調理と配達を同じスタッフが行うことが多いんです。スタッフは担当するお客様のことを思いながら最後のひと手間を加えます。『昨日よりちょっと小さく刻んだよ』『昨日のお粥の軟らかさどうだった』など、会話のきっかけにもつながります」

▼宅配クック123

運営●シニアライフクリエイト
業態●個人宅の高齢者への弁当宅配(バイク、車)
商品内容●弁当の種類は普通食から病気療養中の方向けまで8種類。いずれもごはんの有無を選択可
エリア●47都道府県で約330店舗
回数●毎日~不定期可(注文は前日9~18時まで)
特徴●電話、インターネットで注文された日替わりの昼食、夕食用の弁当(おかずのみ540円~、ごはん付き594円~)を手渡し・安否確認する。昼食や夕食を注文している場合で翌日の朝食を希望する顧客には、パンかおじやとドリンクのセット(216円~)を、前日の弁当と一緒に配達している。社員・販売員のほとんどが認知症サポーターのオレンジリングを取得。2012年にファミリーマートの子会社になったため、現在12店舗ではファミリーマート商品の買い物代行も行う。