グーグルがフェロー諸島にやってきた!

やがて、うわさを聞きつけたグーグルがついにフェロー諸島にやってくる。グーグルカーでストリートビューを撮影するのはもちろん、島民や旅行者にも機材を貸し出し、撮影を依頼。そのために撮影トレーニングも実施した。ストリートビューにすら載っていなかった小さな島は、知る人ぞ知る存在となり、観光客も増加。島民と観光局の取り組みは大成功したのである。

羊の背中にカメラを着けて島の中を撮影。この試みが口コミとなり広がってグーグルが動いた

ここで重要なのは、フェロー諸島の人々はグーグルに「おすみつき」をもらえるよう依頼したわけでも、報酬を支払ったわけでもないという点である。

案外忘れられがちなことだが、「おすみつき」はカネで買うものではない。正しくおすみつきを得るためには、まず、おすみつきを与える側のメリットや関心を徹底的に考える必要がある。フェロー諸島の事例でいえば、彼らはまず「人間ではなく、羊にカメラをもたせる」という世界的に盛り上がるような話題性のある方法で、グーグルの出番を作った。ここでグーグルが動けば、自身のブランドイメージが上がる。グーグルが動かざるを得ない状況を作りあげているのだ。

「見て!グーグルが来た!」(Look! Google is coming)と題された動画も公開されている。

インスタグラマーを呼ぶなら、どんな発表会をすれば効果的?

例えば、これが新製品の発表会であればどうか。「最近、若者の間ではインスタグラムが人気だから」といって、フォロワーの多いインスタグラマーを呼ぶケースが増えている。ここまではいいが、そのインスタグラマーはどのように選ばれた人なのか。新製品を売りたい相手にどの程度の影響力を持っているのかといったことはきちんと考慮されているだろうか。また、発表会の現場でどれぐらい、“インスタグラムっぽい写真”が撮れる工夫がなされているか。一般的な記事を書くための写真を撮るのに必要なセッティングと、“インスタグラムっぽい写真”が撮れるような背景や照明を準備するのとでは、まったく違う。いわゆる「インスタ映え」する写真とは、ただ綺麗なだけではない。ポイントは、投稿されたときに、どれだけSNS上での興味や羨望を引けるか。極端に彩度の高いカラフルな背景や、「ここどこ?」と思わせるような非日常空間、違和感をもたらすような被写体など、フィードに埋もれない要素が重要になる。旧態依然とした記者発表会の延長線上では到底、インスタグラマーたちのニーズには応えきれないはずだ。

結果、「話題のインスタグラマーを呼んではみたけれど、効果はイマイチ」と嘆く羽目になる。「影響力が足りなかった」とインフルエンサーのせいにする前に、インフルエンサーの能力を発揮できる舞台装置が用意できているのか、情報発信の設計から見直す必要がある。

「おすみつき」を与える側はなぜ動くのか? どうやったら動きやすいか? PR担当者はそこを徹底的に考えないと、期待した効果を出すことは難しいのだ。

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