カンボジア国民の平均年齢は24歳。国の経済を支える若い働き手の中には、平均所得を大きく上回る「月額1000ドルプレーヤー」も現れ始めている。しかも彼らは、現地企業に勤める、普通の“サラリーマン”だ。そのうちの1人であり、外資系不動産企業に勤めるダリット氏(28歳)は言う。
「内戦時代を経験した僕の親の世代が若かった頃には、国内に通貨すらありませんでした。生活品は米と金で売り買いしていたと聞いています。僕がまだ幼かった90年代後半にも、クーデターなど内戦の残り火がくすぶっていて、政情が不安定だった。それから20年たたない内に、人々の生活が大きく変化しました。ここ3~4年では、車など高額な買い物をする際にローンを組めるようになったし、海外旅行に行く人も一気に増えています」
取材の最中、ダリット氏はスマートフォンを取り出し上司の電話に対応する。耳元にかざされたのは「iPhone」だ。ダリット氏いわく、「自分のような生活水準にある若者は確実に増えている」という。
「親日国」でも「ビジネスは別」
では、そんな発展著しいカンボジアで、日本企業はどのような状況にあるのだろうか。
日本政府はPKOやODAなどにより、内戦で荒廃したカンボジアの復興を支える事業に尽力してきた。現在でも、プノンペン内の交通用信号設置など、インフラ整備に大きな役割を果たしている。前出のように、プノンペンが「唯一、東南アジアで水道水が飲める街」になった背景にも、実は日本の自治体・北九州市の技術支援およびビジネスベースの交流がある。
そのため日本では、カンボジアは熱烈な「親日国」であるというイメージが根強い。実際、カンボジアの通貨のひとつである500リエルには、日本の国旗が描かれているし、現地で話を聞いてみても、多くのカンボジア人にとって「日本の印象はとても良い」という話ばかりだった。そうなると、当然、民間のビジネスにおいても優位にあると考えたくなるが……日系不動産企業に勤めるA氏は、その実情をため息まじりに話す。
「カンボジアは確かに親日国です。しかし、現地ビジネスで日本企業が勝っているかというと必ずしもそうではありません。特に大型の不動産開発案件では、中国・韓国など外国勢に後れを取っている。その象徴的な例が、イオン2号店の受注です」