「人間中心」「運転に集中できるクルマ」をデザインでどう実現するか

【池田】最後に、インターフェースの部分についてもう少しお話していただけますか?

【前田】マツダの場合、「人間中心」をとても大事にしています。特にドライバーをどう座らせるかからスタートして、ペダル配置とかステアリングの配置とかに全部共通して、あるひとつの哲学が全てに一本筋が通っていることを理想としています。ドライバーの前の空間には色んなものがあるのですが、それを完璧にシンメトリーに配置する。これはインテリアの背骨であるステアリングの中心をしっかり意識するインテリア空間。人が物理的にも心理的にも曲がって座らない。まっすぐ前に向かうことをやっています。実は第6世代の最初にはそこまでできていなくて、クルマを作るだけで精一杯だったのですが、最近ようやくそこにたどり着きました。それと情報をどう見せるかについてのインターフェースはまだ道半ばで、世界をリードするとことまでは行ってない。まだまだ努力しなくてはなりません。

【池田】それでも情報表示のフォントの統一といった試みは、これまで自動車メーカーには見られなかったことじゃないですか?

【前田】われわれはいろんなテーマを持っているんですけど、その中でも「人とクルマの一体感を作る」というのを一番の柱にしているんです。もっと具体的にいうと、一つは「人間がどう座るか」。人間とインテリアの空間は適切なのか、というのと、あともう一つは「どれだけいろんなものが統一されているか」。

いろんなノイズがあると、人間は集中できないですね。そのノイズのひとつがフォントなんです。フォントがバラバラにあると、情報を読み取る時に人間がギャップを埋めなくてはならないんです。それが全部同じで同じ光り方をしている。そういう風にある統一感を持って整理されていると、ノイズは減ります。ノイズっていうのは運転を阻害するものですから、それが全部なくなればホントに素直に直感的に運転できるようなものになるはずなんです。それを目指していくんです。

【池田】実際にやろうと思うと、簡単じゃないですよねぇ。

【前田】簡単じゃないです(笑)。いま取り組んでいるのは、運転に必要な全てのものの、距離感の適正化です。インパネもあればエアベントもあればナビスクリーンもある。その全てをドライバーがいかに何も感じることなくスッと操作できるか。そこにメスを入れていこうと思っています。これが相当難しくて、あんまりやり過ぎると、デザインテーマが成立しなくなってしまいます。そのバランスをどう取って行くかはとても難しいです。全部が自然になれば、全てのものの存在が消えて何も気にならなくなるはずです。そこを目標にしていきます。

2012年2月以降発売の8車種(デミオ、アクセラ、アテンザ、CX-3、CX-4、CX-5、CX-9、ロードスター)は「第6世代商品群」と総称され、すべて「魂動デザイン」という共通テーマに沿ってデザインされている。
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