「現代の奴隷制」外国人技能実習生にもメスを入れる!

一方で、八木氏は労基署で働くなかで「働き手の変化が、社会のバランスをおかしくしている」と感じていたという。

「ここ20年くらい、労働者の二極化が進んでいます。それは、正規雇用と非正規雇用の問題です。たとえば銀行であれば、支店長から末端の行員まで皆が直接雇用の正社員、という時代は遠い昔。労働人口のピークだった1995年から派遣社員などの非正規雇用が増え続け、いまでは日本の全労働者のおよそ4割が非正規になっています。非正規雇用の人たちが抱える、低賃金や派遣切りといった個々の問題が拡大し、同一賃金同一労働や最低賃金引き上げといった課題の解消が叫ばれています。その一方で、正規社員は長時間労働を強いられ、裁量労働の名を借りた過重労働で倒れる人が生まれている。どちらも、どんどん不幸な状態に追い込まれています」

近年は格差の是正が社会的なテーマとされ、安倍政権下でも、長時間労働を規制する法律の制定が進められている。そして、いまの日本社会において、海外メディアから「現代の奴隷制」と批判されるほど苦しい境遇にいるのが、外国人技能実習生だ。八木氏は言う。

「昨年11月、外国人技能実習生についての法律が改正されました。制度が改められることになり、これまでは労基署の幅広い業務のうちの1つでしたが、1月には専門の外国人技能実習機構ができました。平然と最低賃金を無視して薄給で働かせたり、残業しても割増賃金を払わないなど、外国人技能実習生を取り巻く環境はあまりにも酷い。外国人技能実習生が働く事業場への監視の目はますます厳しくなるでしょう」

▼長時間労働の撲滅に乗り出す“かとく”

・電通

過労自殺した高橋まつりさんの労災認定を受け、電通本社を抜き打ち調査。11月7日の強制捜査では全国で88人を動員した。

・エイチ・アイ・エス

都内の複数の店舗で規定時間を超える労働をさせた疑いで2016年7月に強制捜査。勤務記録と実際の勤務状況に乖離があったという。

・ドン・キホーテ

2016年1月、都内5店舗の従業員に労使協定を超える時間外労働を強いたとして、法人としての同社と執行役員ら8人を書類送検。

・エービーシー・マート

靴販売店「ABCマート」を全国展開。都内2店舗で100時間を超える残業があったため労働基準法違反の疑いで書類送検。

・サトレストランシステムズ

「和食さと」「すし半」「さん天」などを展開。違法な時間外労働をさせ、残業代の一部を支払わなかったとして書類送検した。

・コノミヤ

大阪府や愛知県などで86店舗のスーパーマーケットを展開。違法な残業をさせたとして書類送検。従業員の労基署への相談で発覚。

※新聞報道などをもとに編集部作成。

(撮影=大槻純一 写真=AFLO)
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