「寛容な保守改革」は支持されるか
9月24日、前原氏は小沢一郎・自由党代表と協議する。民進党と自由党の合流で合意するが、もしかするとその席で、新進党解党を主導した経験がある小沢氏が、前原氏に野党第一党解党のノウハウを伝授したのかもしれない。
翌25日、小池氏が希望の党を旗揚げし、代表就任を表明する。その日、小池氏はかつて環境相として仕えた小泉純一郎元首相と会談し、小泉氏が説く「原発ゼロ」への賛成を約束した模様である。続いて29日の夜、前原氏と一緒に連合の神津里季生会長と会って野党結集について協議する。翌30日、大阪に出向き、松井府知事、愛知県の大村秀章知事と3人で記者会見して「連携」をアピールした。「やっつけ結集」とからかう声も多いが、安倍首相の電撃解散に即応して、希望の党と民進党保守派と維新の連合軍が電光石火ででき上がった。
前述のとおり、野党側の2極分解が起こったが、22日投開票の総選挙で、国民の審判が下る。判断基準となるのは、一言で言えば「旗・人・矢」だ。旗は理念や路線や政策、人は指導者と擁立する候補者の人材の質、矢は与党側では政策実現力、野党側では政権追及力である。
小池氏は旗として「寛容な保守改革」を打ち出した。改憲容認、消費税増税凍結、法人税改革、原発ゼロなどを提唱しているが、本命は維新との共通項の「地方分権と自治改革」と見る。一方で、「しがらみ打破」を唱え、急進的な改革路線を突っ走る気配もある。手本にしているのは「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉改革ではないか、と映る。
最大の問題点は、小池氏が政治リーダーとしていまだ自身のビジョンやグランドデザインを明確に語っていない点だ。世界観や国家観、目指す社会の具体的な将来像などを、わかりやすく示さなければ、「戦略おたく」のアピール力と勝負師の才だけでは、国民の期待感は長続きしないだろう。
「1強維持・野党ノー」「保守野党結集」「リベラル・共産党」の3つの選択肢のうち、国民が期待感と信頼感を寄せるのはどの道か。