小池氏と前原氏をつないだ「共通点」
総選挙の「与野党対決の構図」が明確となった。自民党と公明党の与党、希望の党と民進党保守派と日本維新の会の連合軍、立憲民主党と社民党と共産党のグループの三つ巴の戦いとなる。
安倍晋三首相は「混迷・民進党」「未熟・小池新党」を見て、今なら勝てると踏んで電撃解散に打って出た。最初は先手必勝の空気が強かったが、「戦略おたく」を自称する小池百合子・東京都知事のアピール力と勝負師の才が上回った。自ら希望の党を結成して代表に就任する一方、前原誠司・民進党代表らとの連携をあっという間に実現し、総選挙政局の主役に躍り出る。解散を仕掛けた安倍首相を吹き飛ばすほどの強烈パンチだった。
だが、対与党の対抗勢力結集をめぐって、小池氏が「理念・路線・政策の一致」を条件に線引き・選別・排除を主張したため、民進党左派が同調せず、新党結成に動く。野党側の2極分解で「1強多弱」に逆戻りという空気も生まれ、ブームは不発、「小池劇場」は開演と同時に閉幕、と予想した人も多かった。
安倍「1強」の要因は、衆参選挙4連勝、今年前半までの高支持率、経済好調などともに、3年3カ月の旧民主党政権に対する国民の失望と幻滅の反動も大きかった。野党転落後、旧民主党、民進党とも、国民の期待感は完全消滅状態である。
今回の安倍戦略については、「大義なき自己都合の不意打ち解散」という批判も強かったが、首相が内閣の議会解散権を使って国民に直接、信を問うという選択は、代議制民主主義の原理に沿った正当な権限行使だ。国民は総選挙で安倍政治への信任・不信任と政権継続について審判の機会を手にする。解散権行使の是非も含めて判断すればいい。
一方で、総選挙は国民にとって政権選択の機会でもある。「増長・慢心・弛緩」が目立つ安倍体制への不信感が今も強く、「1強ノー」という国民の声が大きければ、状況が一変する可能性もある。いきなり政権選択とはいかなくても、自公による安定政治の継続か、緊張感と相互監視が働く政権交代可能な代議政治の復活か、有権者は選択のカードを握る。
その点を強く自覚し、自公の対抗勢力となる受け皿を意識する小池氏や前原氏が今回、意を決して行動を起こした。両者の共通項は年来の保守2大政党論者という点である。