これまで女性から聞いてきた話や、我々自身の経験を振り返ってみても思うことですが、男性は「この人に嫌われることはないだろう」と思っている相手ほど、不機嫌を発動しやすい傾向があります。言ってしまえば、これは完全なる油断と甘えです。そこであえて突き放すように、甘えの行き着く先には「別れ」があるということを伝え、自分が不機嫌な態度を取ることで何を代償にしているのかを自覚させることが効果的だと思うわけです。

「怒る」と「不機嫌」の違い

ところで、「怒る(おこる)」と「不機嫌になる」は似て非なるものです。「怒る」という行為には、自分の主張を相手にわかるように伝える義務や、伝えたことに対する責任、切り出すことのストレスが伴います(そのような義務や責任を果たしていない「怒る」という行為は、単なる暴力です)。一方の「不機嫌になる」は、そういったものを一切背負わないで、相手に都合良く理解してもらったり、変わってもらったりすることを暗に強制する態度です。

『生き抜くための恋愛相談』より。

その意味でも不機嫌になることは赤ちゃんが泣いて訴えることに似ているのですが、しかし、赤ちゃんと母親の関係と、大人の男性と女性の関係とでは、決定的に異なる部分がひとつあります。それはほとんどの場合、女性よりも男性のほうが「腕力が強い」ということです。

恋愛や夫婦関係はある種の“密室”であり、そこでカップルや夫婦は互いに生身で相手と対峙します。そのような状況で腕力や体格で勝る側が不機嫌になれば、たとえ直接的な暴力行為を行ったことがない場合でも、相手は恐怖や不安を感じる可能性が極めて高いはずです。

これは失恋ホストなどの際に多くの女性から聞く話なのですが、男性に不機嫌になられたときに女性がイヤな気持ちになるのは、接しづらさや空気の悪さだけでなく、男性があまり感じることのない恐怖や不安といった感情も大きいのではないかと考えられます。

今回の話に対して、「女だってすぐ不機嫌になるだろ!」といった声も聞こえてきそうですが、我々はここで「女性は不機嫌にはならない」ということを言いたいわけではありません。そうではなく、理不尽な理由ですぐに不機嫌な感情になる男性が、なぜ驚くほど簡単に不機嫌な態度に出ることができるのか、その理由を考えたいのです(我が身を振り返りつつ……)。

「不機嫌になる上司」はもっと厄介

赤ちゃんがすぐ不機嫌になって泣いて訴えるのは、異常に気づかれなければ生きていけないという、いわば生存を賭した「甘え」と言えます。それに対して、気に入らないことがあるとすぐ不機嫌になる男性の態度は、腕力差を拠りどころにした「甘え」だと見ることができるでしょう。すぐ不機嫌になれてしまう男性は、どこかで腕力差や体格差を自覚し、利用しているのです(ちなみにこれは、「すぐに不機嫌になる上司」にも同じことが言えます。この場合は、腕力ではなく権力や立場の差が非対称になります。「すぐに不機嫌になる男性の上司」は、女性にとっては両方の要素があるので本当に厄介な存在と言えます。そこからさらに踏み込んで考えると、恋人や妻に対してすぐ不機嫌になる男性の一部には、「女よりも男のほうが偉い」という差別的な価値観を、なんの疑問もなく持っている人がいるように思います)。

すぐ不機嫌になる男性に対して恐怖や悲しさを伝えることは、「この状況をどうするかはあなた自身で考えて」と突き放すことであり、「相手を尊重する大人になってください」という成長を要求することでもあります。

もちろん、洋子さんが相手の不機嫌に悩むのは、基本的にその人のことが大切だからだと思います。大切な相手と良い関係を築くためには、ときに緊張感も必要だということで、ひとつキリッと決めてみてください!

桃山商事 清田隆之/森田雄飛
恋バナ収集ユニット「桃山商事」のメンバー。2001年結成。恋愛の悩みに耳を傾ける「失恋ホスト」を始め、これまで1000人以上の男女から見聞きした話をコラムやラジオで紹介している。「日経ウーマンオンライン」で連載している恋愛相談が人気を博すほか、「anan」「Numero TOKYO」「FRaU」「毎日小学生新聞」「精神看護」などに寄稿。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)、清田隆之名義の著書に『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコとの共著)がある。
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