自民単独で55減、自公だと90議席減でも過半数

安倍首相は祖父・岸信介元首相の「失敗の教訓」を忘れていない。「失敗」というのは、1960年の安保改定の際の解散回避である。当時の岸首相は新日米安保条約を調印した後、解散・総選挙を模索しながら、結局、決断せず、そのまま批准国会に突っ込み、大安保騒動に見舞われた後、批准成立と引き換えに首相辞任を余儀なくされた。

安倍首相は、重要な達成目標に挑む際は、その前に必ず総選挙を設定して国民の信を問うた上で挑戦しなければ成功しない、と胸に刻んでいると見られる。

いくつもの条件や事情、情勢をすべて視野に入れ、熟慮の末、解散断行を決断したと思われるが、冒頭で触れたとおり、何よりも「やれば勝てる」という計算が先に立ったのは疑いない。それでは、総選挙での勝ち負けはどうなるのか。

勝敗ラインという点で注意すべきは、「1票の格差是正」による「0増10減」措置の実施で、今回から総定数が475から465に減った点だ(小選挙区は295から289に6減。比例代表区は180から176に4減措置)。

そのために、勝敗ラインの一番の目安とされる過半数も、238から233に変わる。改憲案発議に必要な議席数は、憲法第96条で「衆参両院の総議員の3分の2」と定められているが、衆議院の3分の2も、317から310になる。

9月20日現在、衆議院の自民党の議席は288、公明党は35で、与党の総数は323である。総選挙での勝敗ラインを過半数とするなら、自民党単独で55減、自公だと90議席を減らしても過半数を維持できる計算となる。

他方、野党側は数字の上では厳しい。現在、民進党、共産党、日本維新の会、自由党、社民党の合計議席は128で、自公の過半数阻止には105議席を上積みしなければならない。民進党の過半数獲得は、当然ながら誰もが不可能と見ているが、現在の88議席の約3倍増が必要だ。

改憲発議要件の3分の2はどうか。安倍首相が「改憲勢力」と見なす自民、公明、維新の合計議席は現在、338である。総選挙で3党で合わせて28減となっても、3分の2を維持できる。

公明党は改憲問題では安倍首相や自民党との不一致が目立っている。改憲案の中身や改憲挑戦の進め方、発議の時期などをめぐって、今後、自民党や維新との距離が大きくなり、最終的に安倍流「改憲勢力」から離脱する可能性もないとは言えない。

仮に公明党が改憲チームから離脱しても、憲法問題に関しては、おそらく「改憲勢力」に数えられることになる小池新党の「希望の党」を引っ張り込めば、3分の2の確保は可能、と首相は読んでいるのかもしれない。

安倍首相は宿願の改憲挑戦も含めて、悪くても「やって負けはない」と算盤を弾き、在住2度目の解散・総選挙に踏み切ったのだろう。だが、安倍首相の狙いと計算どおりに行くかどうか。

衆参の選挙では、いつも国民は諸般の事情を見渡して冷静に対応し、おおむね賢明な判断を下すといわれている。安倍首相の解散・総選挙の狙いと計算も、今年初めから顕在化した「1強の増長・慢心・弛緩」の表れと見て、冷たく背を向ける可能性も否定できない。「計算上の数字」では見えない民意を、安倍首相は正確に認識しているのかどうか。

▼編集部おすすめの関連記事
解散で"朝毎"は反対、"読産"は賛成の中身
(写真=AFP/アフロ)