シニアの幹部は二重人格たれ

また、西山さんや三上さんによれば、新しい仕事で成功するシニアは、社交的な性格の人も目立つそうだ。

「交友関係が広く、定年の数年前から『何かお役に立ちそうなことがあれば、ぜひお声掛けください』と知り合いに“営業”する人は、すぐに新しい仕事に就いていますね。一方、内向的な性格のせいで、高いスキルを持ちながら、それをアピールできず、駐車場やマンションの管理人をしている大企業の元社員が大勢います」(三上さん)

再就職できたとしても、前職でのやり方を変えられず、新しい職場に馴染めないシニアも少なくない。典型的なのは、「ふた言目には前の会社のことを持ち出し、職場の鼻つまみ者になってしまう人」(西山さん)。そうならないためには、転職先では心機一転、「新入社員のつもりで仕事を覚える」ような柔軟な姿勢を保ちたい。

シニアが再就職する場合、企業の幹部として招聘されるケースも多い。経営と現場の両方を見ながら仕事をするので、三上さんは、いい意味で「二重人格」になることも勧める。

「立場によって性格を使い分けるということです。経営者の共感を得られなければ、仕事を進められないので、経営者に対しては論理性・スピード・説得力を重視したプレゼンをします。一方、現場に対してはフォローしなければならないので、協調性・調和・対話という姿勢で臨みます」(三上さん)

社内よりも市場価値を意識せよ

40代の人は「定年後なんて、まだ先のこと」と高をくくってしまうかもしれない。しかし、西山さんはこう釘を刺す。

「大半のビジネスパーソンは、40代半ばになれば、先の道筋もおおよそ見えてくるはず。『自分は経営者や子会社役員になれそうもない』と考えたら、定年後を見据えたキャリアプランを再設計し、仕事のやり方も転換すべきです。具体的には、自分の得意なスキルに磨きをかけ、社内よりも市場価値を意識して仕事をするべきでしょう」

「性格は生まれつきで、変えられないのでは?」と思うかもしれない。だが、「プライドを捨てる」や「取引先と対等に付き合う」といったことは、心がけ次第でできる。マインドチェンジに取り組んでみよう。

西山昭彦
一橋大学特任教授。一橋大学卒業。東京ガスに入社。東京ガス都市生活研究所長、法政大学大学院客員教授などを経て現職。『好きなことで70歳まで働こう!』など著書多数。
 

三上俊輔
ジーニアス社長。2006年、早稲田大学卒業。サーチファーム・ジャパン入社。11年、ジーニアスを設立して現職に。人材のスカウトなどのプロジェクトを戦略的に遂行している。
 
(撮影=加々美義人)
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