効果的なキーワードは?

「『人妻ですから』澤穂希結婚報告」

「目立つタイトル」に不可欠なのが、「目立つキーワード」です。世間的に認知度の低い人名や単語を使っても、スルーされてしまう。より多くの人の興味をかき立てるキーワード選びが肝になります。

「目立つキーワード」は見出しの冒頭(=左)に置くのが鉄則です。あるポータルサイトでは「澤穂希が結婚報告『人妻です』」から「『人妻ですから』澤穂希結婚報告」に変えたことでアクセス数がグンと上がったそうです。世間では、「澤穂希」より「人妻」のほうに興味を持つ人が多いのですね。

もちろんファンは元サッカー女子日本代表である「澤穂希」の名前だけでクリックするし、2ちゃんねるでは澤さんの愛称である「兄貴」のほうが引きは強いかもしれません。いわゆる「ネットの文脈」でウケるキーワードもいくつかあるのですが、それ以上に誰に読んでほしいか考え、そのターゲットに響くようなキーワードを選ぶべきなんです。

「当たり前の情報」を入れないのもポイントです。わかりやすいのが、「シルバーウィーク 全国で大渋滞」「高速渋滞Uターン ピーク時45キロ予想も」に変えたらアクセス数がぐっと増えた事例。その週がシルバーウイークという大前提の情報を省き、代わりに本文中の具体的な数字を引っ張ってきています。いかに渋滞しているかを示す「45キロ」という数字にぎょっとした人は、「これから自分が走る道路かもしれない」と思わずクリックしたはずです。

怒られないためのマナーは?

「ギャラ大幅減額 出入り放送作家告発」

タイトルをつけるうえで、実は最も私が気を配っている要素があります。それは、ズバリ「訴えられないこと」。いくらアクセス数が増えても、訴訟になったときに負けるタイトルはNGです。

そう考えるようになったのがウェブ編集者になって3年目、ある放送局の内幕を暴露した記事に「ギャラ未払い 出入り放送作家告発」というタイトルをつけたのがきっかけでした。記事の内容は99%正しかったけれど、正確には「未払い」ではなく「大幅減額」だった。はじめは局から「訴える」と言われていたものの、最終的には謝罪文と経緯説明書を書き、記事を取り下げることで手打ちになりました。そのとき先方から言われたのが、「記事自体は『やられた』と思った。でも、『未払い』の3文字があったから逆転できた」という言葉。以来、「釣る」見出しは一切やめ、事実だけを伝えるスタンスを取るようになったのです。

ですから、「浜崎あゆみが売りに出した『南青山の大豪邸』、その売却額」では、実際に25億円で売りに出されてはいたものの最終的な売却金額はわからなかったため、具体的な数字を出すことは諦めました。グレーな部分はグレーのままに書くべきです。

紙の雑誌とインターネットでもつけるタイトルは変わります。ターゲットメディアである紙の雑誌はいつもの読者が手に取る「会報誌」と言えますが、「いつもの読者」ではない人の目にも触れるのがインターネットです。

そのような「無法地帯」であるネットで、「中身を読まずにタイトルだけで騒ぐ人」たちもたくさんいるので、目立つタイトルの記事はたちまち炎上しています。それでアクセス数は稼げるのかもしれませんが、記事に関連する人や企業には迷惑しかかけません。