こんなケースは懲戒処分もやむなし

図1:就業規則で禁止されていても基本的には副業可/図2:解雇の有効・無効はこう判断する!
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図1:就業規則で禁止されていても基本的には副業可/図2:解雇の有効・無効はこう判断する!

不況の影響で、残業禁止、給料カット、ボーナス減額など、サラリーマンにとっては苦難のときが続いている。空いた時間を利用して苦しい家計を少しでも補おうと、副業・アルバイトを考える人も増えているという。果たしてサラリーマンの兼業は可能なのか。

本来、誰にでも「職業選択の自由」(憲法22条)があるので、兼業することは自由なはずだが、就業規則で「会社の許可なく他社に雇い入れられること」が禁止され、これに違反した場合に懲戒処分とする規定が設けられている場合が多い。

これらは労働者を自社の業務に心身ともに専念させたり、企業情報の漏えいや競業を防止するといった目的があると考えられるが、本来自由であるはずの兼業や副業に対して、そもそも、会社が制限することができるのか。

この点、判例の傾向は、兼業禁止について無条件に有効と判断せず、禁止の目的や範囲から、禁止することに合理性がある場合に限定している。会社の職場秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に支障がなければ懲戒処分とすることは許されず、逆に、影響や支障があるような場合には、懲戒処分もやむをえないと判断している。

例えば、(1)長時間労働により、精神的・肉体的疲労の回復が妨げられる。(2)企業イメージが損なわれる。(3)本業との競業や機密保持の観点で問題が大きい(その地位やノウハウを利用して利益を得ている場合も含む)。

といった場合には、兼業禁止規定による懲戒処分が有効となる可能性が高まるので注意が必要だ。

過去の判例では、家業の新聞配達を短時間手伝っていたタクシー運転手や、年1、2回程度貨物運送のアルバイトをしていた運送会社の運転手について、仕事に支障がないという理由で解雇が無効と判断されているが、一方で、キャバレーの会計係として深夜まで働いていた女性従業員については、長時間の労働によって業務に支障をきたしていたとして、解雇が有効とされた。

つまり、どのような兼業・副業もOKなのではなく、あくまで「仕事に大きな支障がない」範囲であれば問題ないと考えたほうがいいだろう。

無用なトラブルを避けるには、まず勤務先の就業規則で兼業・副業に関する規定を確認しておくことだ。

仮に、「届出制」「許可制」をとっているのであれば、なるべくそれに従ったほうがいい。会社に黙って行う場合であっても、職種を厳選し、労働時間を考慮するなどの注意が不可欠だ。

また、副業を勤務時間内にすることはご法度。例えば、アフェリエイトやオークションの更新など、副業に類する作業を勤務時間中に会社のパソコンで行ったりすると、職務専念義務に違反したとして、懲戒処分を受けることになりかねず、リストラの口実にされる可能性もある。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=北湯口ゆかり)