「勉強しなさい」と叱ると勉強嫌いのままになる可能性

勉強が嫌いだった子がなぜ、勉強好きに豹変したのか? 「嫌い→好き」の子供や家庭の特徴は何なのか? 前出の橋本尚美研究員は2点挙げる。それは「本人が勉強する動機」と「勉強方法」だ。

まず、「本人が勉強する動機」について。勉強する理由として、「新しいことを知るのがうれしいから」が当てはまると答えた子供は、「勉強嫌い→勉強好き」になった子の場合76.1%であるのに対し、「勉強嫌いのまま」の子は42%で、約34ポイントもの大きな差があった(グラフ2参照)。

「“勉強嫌い→勉強好きになった子”は、『知るのがうれしい』といった自分の好奇心や関心など内発的動機で勉強している割合が高いということです。もともと知的好奇心を備えてはいたものの勉強が嫌いだった子が、何かをきっかけに勉強と知的好奇心が結びついて、勉強好きになったと考えられます。一方、“勉強嫌いのままの子”が勉強する理由は、先生や親にしかられたくないからという外発的動機がもっとも高い結果でした」(同)

*出典:東京大学社会学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子供の生活と学びに関する 親子調査2015-2016」回答者:【青のグラフ】2015年、小4~5年の31.9%を占めた「勉強が『嫌い』」な子供のうち、1年後(2016年)、小学5~6年になったときに「勉強が『好き』」に転じた子供たち(小学5~6年の11.1%)。【赤のグラフ】同じく2015年、小4~5年の「勉強が『嫌い』」な子供のうち、1年後(2016年)も「勉強が『嫌い』」のままの子供たち(小学5~6年の20.5%)。回答者は、2015年は小5が1292人、小6が1245人、2016年が小5の1335人、小6が1221人。以下、同。
「勉強しなさい」という言葉を胸にしまってすべきこと

以上の結果・分析から確実に言えること。それは「勉強しなさい」と子供をしかるのは、かえって勉強嫌いのままにしてしまい逆効果になる可能性が高いということだろう。まったくもってしかり損なのだ。

この調査では、学校で“調べ学習”(たとえば、住んでいる地域の歴史や産業を調べる社会科の授業など)をした経験がある子の方が、勉強好きになるという結果も出ている。親は「勉強しなさい」という言葉は胸にしまって、子供の興味に寄り沿い、そのことを一緒に楽しむ(たとえば、興味を持ったことをネットで調べたり、関連する本を買ってやったりする)ことから始めたほうが、1年後にミラクル(勉強嫌いな子が勉強好きに変身)がやってくる可能性が高い。