「適度な不一致」が話題につながる

循環型マーケティングで商品をヒットさせるには、商品に関する話題を提供することで、消費者のクチコミを促し、情報を循環させることが重要です。

例えば、花王が2013年に発売したヘルシアコーヒーは、テレビCMによる認知で購入した人が最も多かったのですが、消費者のクチコミを通じて購入した人も全体の1割程度いました。ヘルシアコーヒーの話題性は、「ヘルシア」というトクホ(特定保健用食品)の健康的なイメージと、缶コーヒーという、どちらかといえば健康とは無縁なイメージとのギャップにありました。「健康にいい缶コーヒーって何なの?」という意外性がクチコミにつながり、情報が循環してヒットにつながったのです。

同様にヒットした商品にセブン-イレブンが土用丑の日向けに期間限定で発売した「う~なぎチョコパン」があります。この商品はマス広告は打っていませんが、消費者が店頭でウナギ形の菓子パンというユニークな形を目にして話題となり、クチコミでヒットしました。

ガリガリ君リッチコーンポタージュは大反響で販売が一時休止になった。(AFLO=写真)

定番のブランドでも、定期的に新商品を投入して話題づくりを行い、ブランドの活性化につなげるパターンがあります。赤城乳業のアイスキャンディー「ガリガリ君」は、コーンポタージュ味やナポリタン味など、変わった味の商品を発売することで話題づくりに成功しています。

こうした商品の話題づくりにおいて大切なのは、「適度な不一致」というポジションをつくることです。例えば、ヘルシアコーヒーがヘルシア緑茶と同じようにペットボトルで登場していたら、あそこまで話題にはならなかったでしょう。缶コーヒーのパッケージで、ほかの缶コーヒーと同じ売り場で販売されているからこそ、「缶コーヒーだけど、ちょっと変わっている」ということで話題になったわけです。

不一致がなければ話題になりませんが、不一致が大きすぎても話題にしづらくなります。それは、私たちが普段、自分とかけ離れた人の意見を聞こうとしないことと同じです。適度な不一致のさじ加減は難しいかもしれませんが、そこで頼りになるのが、先述の情報循環層です。この層は、話題にしやすい不一致を感覚的に理解しています。この層の意見を上手に取り入れることで、話題性のある商品づくりが可能になるでしょう。

(構成=増田忠英 写真=AFLO)
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