こうしたイベントも、翌年になると「季節の風物詩」として受け入れられるようになっているから不思議です。筆者も「独特の校風」に違和感をもたなくなっていました。

寮生の約2割は外国籍の学生

寮では、原則2名1室で共同生活を送ります。また、毎月、30~40名規模で共同生活上の役割分担や寮の運営方針について話し合う「寮会」が行われており、同じ部屋の学生だけでなく、寮に住む他の学生とも関わります。

筆者の学生時代には「友達の友達は友達」という言葉がよく使われていました。ほかの大学より少人数で、学部学科は教養学部アーツサイエンス学科のみであることに加え、他学年や他専攻をつなぐ寮生のネットワークがあるため、ICUでの人間関係はかなり独特なようです。

また、寮には留学生や海外の教育を受けた学生、日本の高校を卒業した学生など、さまざまな背景を持った学生がいます。ICUによれば、現在寮は「平均して2割程度が外国籍の学生」。その影響なのか、「寮生は寮生以外に比べて、外国の教育を受けて9月に入学した学生との距離が近い印象がある」と振り返る卒業生もいました。

寮に住んでいた卒業生に、英語を使う頻度について聞くと、「日本語よりも英語の方が分かる学生とは英語で話すし、英語で話している学生との会話に加わることもある」という答えでした。学内での人間関係の濃さや、国際性という点で、寮生活は「ICUらしさ」を体現したものになっていることがうかがえます。

大学本館。旧中島飛行機三鷹研究所として使用されていた建物に4階部分を増築し、1953年完成(設計=ヴォーリズ建築事務所)。

寮の思い出を語りだすと止まらない

ちなみに、ICUではこれまでに約5000人が寮生活を経験しています。学生寮に入っていたことを公言している著名な卒業生は、前国連大使の吉川元偉氏、富士ゼロックス元社長の有馬利夫氏、経済学者の八代尚宏氏など。このうち八代氏は、当時について、「ICUでは3年間第一男子寮に住んでいて、寮で最初にした仕事が風呂焚きでした。寮はガスがまだない時代でした。寮生活は民主的で、“自治”という概念を守りつつ、規律のある共同生活をエンジョイしました」(同窓会ウェブサイトより)と振り返っています。

卒業生との同窓会も寮ごとに行われており、世代を超えた交流があります。数十年前に寮に住んでいたという卒業生に話を聞いたところ、寮の思い出を語りだすと止まらない様子で、次から次へとエピソードを披露してくれました。卒業生が寮の魅力を熱心に語るのも、特徴のひとつです。