【槙野】当時、寿人さんはベンツに乗るわ、ルイ・ヴィトンのバッグを持ってロレックスの腕時計はしてるわ……。頑張ればこういうものが持てるんだというメッセージになるんだな、って。その頃から僕の意識もずいぶん、変わりましたよ。

槙野智章選手×小柳ルミ子さん。

【小柳】そうね、大事なことね。私も見られているという意識で、今でもボイストレーニングに行っているし、自分の体を衣装に合わせるように努力しているわ。

【槙野】やはり、見ている人に夢を与えたいですから。(三浦)カズさんとか(中山)ゴンさんがゴールを決めた後、カズダンスとかパフォーマンスをしますよね。僕たち若い選手も何かしないといけないって思いました。

【小柳】そうですね。足を運んで、見てもらってなんぼですから。それは私たちの仕事も同じ。いろいろなことで憧れとか尊敬とかでね、足を運ばせることって大変ですからね。

サッカーの試合を1つの公演として考える

【槙野】当時、所属していた広島の本拠地は5万人収容で観客は7000人ぐらい。そこでゴールパフォーマンスを考えたんです。そして、試合後の劇場型パフォーマンスも考えました。試合後に歌を歌ったり仮面をかぶったり、いろいろやりました。サポーターの代表者と話し合いをして、「こういう歌詞を書くから、サポーターも歌って下さい」ってお願いしたりしましたね。サッカーの試合を1つの公演と考えました。口コミでこれが広がって「あいつらサッカー以外でも面白いこと、やってるぜ」って。どんどん広がったんです。

【小柳】やっぱり「見たいな」「触れたいな」とか「時間を共有したいな」って思わせなければ、足を運んでもらえないから。

【槙野】そうですね。サッカーをただ見に来ただけでなく、勝った後にはこんなことがあるよ、とか、ゴール後に面白いパフォーマンスがある、とかも恒例化させたという自負も、ありますね。

【小柳】私もね、チケット代プラスお土産というか、舞台が終わった後、お客さんにこんなお土産をもらったって思ってもらいたいって、いつも考えているんですよ。きちんとプレゼントして帰したい。「チケット代、高かったわ」って感じさせちゃいけないって思うのよ。

【槙野】確かに、そうですよね。だから、僕もちょっとやそっとのけがなら無理してプレーしちゃう。気がつくと相当大きなけがになっているときもあります。