「うれしい!」「楽しい!」を増やしてあげる

何をすれば「ドーパミン・サイクル」は発達するのでしょう? ドーパミンはいつ分泌されるのでしたか? そう、うれしいことや楽しいことがあったときですね。脳にとってうれしいことや楽しいことを増やしてあげるとドーパミンが分泌され、その繰り返しで「ドーパミン・サイクル」ができあがります。

子どもの脳のドーパミン・サイクルをつくるために親がしてあげられることは、「うれしい!」「楽しい!」と思う体験をどんどん増やしてあげることです。脳がうれしい、楽しいと思うことは、好奇心や探究心が刺激されることです。はじめてのことやワクワクドキドキすること、「何かな?」「どうしてこうなっているのかな?」と興味が持てるようなことがたくさんあると、脳でドーパミンがどんどん分泌されます。

AIにできなくて、人間だけができること

「うちの子は天才になるわけないし」と思っている親御さんも多いかもしれません。でも、ザッカーバーグやジョブズのようにならなくても、何か興味があることや世の中の問題を見つけ、その解決のために熱中する力は今後どんな人にも必要とされます。

最近、将棋や囲碁で人工知能(AI)が人間に勝ったとニュースになりましたが、世界中でAIの研究が盛んです。さまざまな分野で導入が試みられていますが、AIは計算や記憶など、ビッグデータを高速かつ正確に処理することに威力を発揮します。病状や症状から病名を診断したり、判例を元に裁判の審理を行ったりすることは、人間よりAIのほうが速くて正しい、そういう時代がやってくるかもしれません。そういう時代が来るとしたら、人間はAIにできないことをやるしかありません。そうでなければ、人間が存在する意味がなくなります。

AIにできなくて、人間だけができること。それはまさしく問題点や改善点を見つけ、それを解決して世の中をよりよくするためのアイデアを出すことです。これからの時代を生きる子どもたちは、そういう力を磨いておくことが生きていく上でも大切です。問題に気づく力、探求する力、アイデアを発想する力を磨いておいて、もしお子さんがスゴい発明をして天才と呼ばれるようになったら、それはラッキーなんです。「うちの子は天才にはなれないし……」と思うのではなく、これからの時代、必要な力をつけてあげようという気持ちをもってお子さんに接してあげましょう。

食事の工夫でもドーパミンは分泌させられる

そうは言うものの、皆さんお忙しいですよね。四六時中子どもにつきっきりで、たのしいやうれしいを一緒に体験することは難しいかもしれません。でも、難しく考える必要はありません。たとえば毎日3回食べる食事。食事の工夫でも子どもの脳にドーパミンを分泌させることは可能なんです!

私たち大人は何十年も生きてきて、なんとなくたいがいのものは見たことがあったり、知っていたりするような気になります。でも皆さんの子どもは生まれてから300日とか、3年とかしかたっていません。彼らからしたら、毎日3回ご飯の時間があることも驚きでしょう。お皿の上にいろんなものが載っていて、それをつかんだり口に入れたり飲みこんだりしていい。食事は本来、小さな子どもにとってすごく楽しいことなのです。

本にも書きましたが子どもの脳は意外と保守的なので、「定番5割サプライズ5割」で毎日の献立を考えてあげましょう。見慣れたおむすびやスープのそばに、はじめて見る季節の野菜や煮物が並んでいる。口に入れるとはじめての味や感触がある。それだけで子どものドーパミンはぐんぐん分泌されます。