子どもは元気だからサングラス不要?

とはいえ、炎天下、サングラスなしで朝から夕方まで屋外で練習する日々を何年も続けたら、どれだけ目を痛めることになるのか。大人になってから白内障や黄斑変性症などを患うリスクがぐんと高まりかねない。

私は日差しの強いカリフォルニアに5年間住んでいたことから、紫外線のリスクについていやが上にも考えさせられた。屋外でスポーツするときに帽子、日焼け止め、サングラスの三点セットを持参するのは常識であり、紫外線から子どもを守るために一生懸命なアメリカ人の友人に感化された。「日焼け=健康的」という意識は皆無だった。

とりわけサングラスに対する意識は日本とは大きく異なる。屋外では率先して大人がサングラスを掛けてお手本を示しているから、子どもたちもサングラス着用に抵抗感を見せない。私自身も目の検査の際に「屋外ではできるだけサングラスを着用するように」とよく言われたものだ。

「子どもは紫外線による健康被害を受けやすい」

アメリカでは紫外線から子どもの目を守ろうとの意識は数十年前からある。

例えば1993年7月の米ニューヨーク・タイムズ記事だ。「太陽から子どもの目を守ろう」と題し、「子ども向けサングラスの販売が爆発的増加」「幼児や子どもの目は紫外線をカットする色素が薄いから要注意」「70代の白内障や網膜変性は若い時期から紫外線を浴び続けた結果」などと書いている。

アメリカだけではない。世界保健機構(WHO)もかねて「子どもは紫外線による健康被害を受けやすい」と警鐘を鳴らし、帽子や日焼け止め、サングラスの使用を呼び掛けている。特に学校の役割に注目しており、「子どもを紫外線から守るうえで学校が担う役割は決定的に重要」と強調している。

それと比べると彼我の差はあまりにも大きい。かつて日本の部活動では「練習中は水を飲んではいけない」という非科学的慣行がまかり通っていたのだ。だが、今でも「子どもは元気だからサングラスなんて不要」「日本人は目が黒いから紫外線をカットできる」といった思い込みがどこかにあるのだとしたら、今も昔と変わらず非科学的である。