1957年、静岡県生まれ。54歳。80年一橋大学経済学部卒業、藤沢薬品工業入社。2003年経営企画部長。05年山之内製薬と合併、アステラス製薬経営企画部長に。6月より現職。
1.出身高校:静岡県立静岡高校
2.座右の書、好きな本:司馬遼太郎『この国のかたち』
3.尊敬する歴史上の人物:無回答
4.座右の銘、好きな言葉:誠実であること
5.健康法・ストレス解消法:自転車や徒歩で街を散策
アステラス製薬社長の畑中好彦は、物腰柔らかな紳士である。そしてとてもダンディだ。だが、その丁寧な口調から出てくる言葉からは、芯の強さ、頭脳の明晰さが伝わってくる。
3月末に社長就任を打診されたとき、即座に受諾の返事をした。
「マネジメントの一員として、常に責任を負っているという覚悟はありました」
ある意味では包み隠しのない率直な答えだ。前社長の野木森雅郁会長は、畑中を指名した理由を「幅広い視点から、最適の判断を素早く下すことができる能力を高く買った」と述べている。
アステラス製薬は、05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した。畑中は80年に藤沢薬品に入社。両社の合併や10年に約3700億円を投じた米OSIファーマシューティカルズの買収など、エポックメークな案件では、事務方の取りまとめ役を務めてきた。
大型合併には失敗も多いが、アステラスは合併の好例と評価されている。それはなぜか。
「同じ目的を持った両社が一緒になった。当初から山之内でも藤沢でもない“アステラス・ベスト”のディシジョンを求めてやってきた。これがいまのカルチャーのベースになっていると考えております」
違う会社が一つ屋根の下に入るのだから、軋轢はあった。
「時には『社風が違うから一緒にはできない』という話も出てきてしまう。そういうことは気がついたら排除するようにしましたし、最後までそういう意識を持っておられる方は、新しいアステラスの価値観にはついてこられなかったのではないかと思っております」
ソフトな語り口とは裏腹に、いっていることは一本筋が通っている。
前期は主要製品の特許切れの影響を受けて減収減益だったが、業績はこれが底で、今期から回復に向かうという。
目指す将来像は、実に明確だ。最上位に経営理念があり、それを実現するためのビジョン、ビジョンを具体化した事業戦略が筋道だってつながっている。