3タイプに分かれる不安遺伝子
ストレスの発生源として、人の「DNA気質」に着目するのは、日本メンタル再生研究所所長の山本潤一氏だ。師事する筑波大学名誉教授の宗像恒次氏の研究に基づき、人には3つの「人格気質」があると説明する。
「循環気質」(チンパンジー型行動特性)、「粘着気質」(ゴリラ型行動特性)、「自閉気質」(オランウータン型行動特性)がそれだ。
チンパンジー型は社交的で話し好き。ゴリラ型は親分肌で面倒見がいいが、上下関係にこだわり秩序を重んじる。オランウータン型は一人でいることを好み、おとなしくて内向的。この3つの人格気質を理解せずに、自分の気質を押しつけると上手くいかない。お互いにイライラし、やがて怒り出す。山本氏は「期待できないことを期待することで怒りは生まれる」と解説する。
「たとえば、チンパンジー気質の人が、オランウータン気質の人にワーワーいうと、オランウータン気質の人は不快になる。しかし、チンパンジー気質の人に黙れといってもムリ。一方、秩序のない様子を見てゴリラ気質の人も腹を立て始めるのです」
この問題をさらに複雑にするのは、「不安遺伝子」の存在だ。山本氏によると、情緒安定物質と呼ばれるセロトニンを流通させる「セロトニントランスポーター(5‐HTT)」という遺伝子を誰もが持っている。それには長さの違う2種類があり、短いタイプ(S型)はセロトニンの流れが不活発になって不安になりやすく、長いタイプ(L型)は逆にセロトニンの流れが活発になって不安になりにくい。
人は親から不安遺伝子を受け継ぎ、主に「SS型」「LL型」「SL型」に分かれる。SS型は非常に不安に陥りやすく、LL型はあまり不安に陥らない。SL型はその中間だが、不安に陥りやすいのは間違いなく、SS型と合わせて「S型」という。
その不安遺伝子と先ほどの気質の組み合わせで、怒りの発現の仕方も変わる。「S型で循環気質の人が不安になると、やたらとしゃべりたくなります。自分を認めてもらうことで心を安定させようとするのですが、それができないと不満が噴出して、怒りにつながります」(山本氏)。