最も経済的メリットがあるのは「女子の要資格職」

図表2をみてもらいたい。これは、「高卒と比べたときに、各学歴の所得が何%高くなるか」をあらわした分析結果である(労働年数や企業規模、転職経験は統制した後の数値を記載)。

まず、男子の結果をみると、大卒や大学院卒には統計的に意味の効果が認められる一方で、専門学校卒は、【要資格職】であろうと、【非資格職】であろうと、高卒と同程度の所得しか得られていないことが示されている。プラス2~3年の教育を受けても、所得は向上しないということだ。上述の「資格に守られた働き方」以前の状況が繰り広げられていることを意味しているが、他方で女子の結果をみると、男子にはなかった効果を読み取ることができる。すなわち、【要資格職】の場合は23.1%、【非資格職】の場合は17.9%、高卒女子よりも所得が高い。なお、同じ短期高等教育である短大卒の値をみると、【非資格職】とほぼ同じ17.3%。専門学校で得られる資格は、女子にとって大きな意味がある。

徐々に変化が起きているとはいえ、女子が仕事で活躍するには、いまだ難しいところが残っている社会である。いまでも結婚・出産時期に悩む声がやむことはなく、むしろ高まっているきらいさえある。そうしたなか、職業に直結した教育内容、そして資格保有の有利さが際立つのは女子の世界において、ということなのだろう。

意識高揚装置としての専門学校

しかし、以上は経済的側面に限った話である。ここで意識面まで広げて調査データを丁寧に読み込むと、図表3の結果にたどりついた。これは「自律性得点」と「適合性得点」の2つを指標に、各学歴がどのような心持ちで仕事に臨んでいるのかどうかを捉えようとしたものだが、男女ともに専門学校卒の【要資格職】が極端なポジションに位置していることがわかるだろう。

すなわち、男女に関係なく、どの層よりも、高い意識をもって働くことができているのが、【要資格職】の卒業生なのだ。彼/彼女らは、「自分の力で仕事をする」「この仕事をしている自分が好き」といった意識を、強く感じながら働いている。

「稼ぐこと」と「充実感に満たされること」――その両方が伴う働き方ができるにこしたことはない。しかし、もし、そのどちらがより大事かという質問を投げかけられたとき、後者を選ぶ者も少なくないのではないだろうか。専門学校を卒業し、「手に職」を付けた場合に得られるメリットは、資格領域に限定される話ではあるが、女子であろうと、そして男子であろうと、高い就業意識を持ちながら働けるという点にある。