親の介護 上司に相談できたのはわずか1割
一方、介護について、勤務先に相談をした人の割合は、離職者のわずか約1割にとどまっており、勤務先とのコミュニケーションが十分取れていなかった可能性もあると考えます。
和氣さんからは介護離職の経験者としてこう語ります。
「自身の経験から言えることですが、『とりあえず、会社を辞めて落ち着いて考えよう』を選択肢から外すことを考えていただきたいと思います。特に40歳を超えてからの再就職は非常に厳しいですし、今の仕事を続けながら、介護をする方法を考えてみてください。そして、介護に直面をしたときに、職場では、まず上司等職場の責任者に報告することが重要です」
親の介護に直面した際、上司に報告したほうがいい理由は2つあります。
▼思い切って上司に相談するメリットは2つ
1つ目は、隠しながら仕事と介護の両立をしていると、その負担の重さからいずれ心身ともに壊れていく可能性があるからです。
2つ目は、特に介護の初動時において勤務時間中に要介護者やケアスタッフから電話がかかってくることがあり、その対応をしていると、勤務態度が悪いという評価になりかねないからです。上司の協力や理解を得られれば、仕事と介護の両立はしやすくなります。
前述したとおり、仕事と介護の両立が難しい職場も存在しているのは事実です。
しかし、介護離職後の再就職の負担を考慮すれば、まずは、上司にきちんと報告し、現状、勤務先で利用が可能な支援制度を活用して、働くことに集中できる介護環境を整えるなど、仕事と介護の両立に向けた働き方を模索していくことが重要だと考えます。
【介護離職の防止策:最後に】
和氣さんは最後にこのようなアドバイスをしてくれました。
「介護に直面すると、いろいろな問題が発生します。私自身の経験のなかでも、当初、仕事を続けながら、介護をしていることを非難されたことも決して少なくありません。しかし、介護者(自分)は誰からも守ってもらえないのです。介護に直面したときは、要介護者を中心に考えてしまいますが、自分の心と体が健康でなければ、守りたいものも守れません。自分の人生を最優先に考えて、そのうえで介護とどの様に向き合うか、という考え方の選択肢もあるということを知っておいてほしいです」