「テレビを差し押さえしようとすると、『友達から借りてる』ってみんな言う」

夕方のニュースやゴールデンタイムの番組で、差し押さえの現場の映像が流れることがあります。あれは、国税ではなく地方自治体の都道府県税事務所に密着しています。主に滞納者の自宅に行って、「いきなり来るな」と言われれば「督促状を何度も送っている」と言い、「令状はあるのか」と聞かれれば「国税徴収法があるので令状は必要ない」と伝え、「今は忙しいからまた今度」と言われれば無視して闖入し、「このテレビは友達から借りてるから、持っていったらダメ」と言われれば鼻で笑ってあざける。

そんな場面に何度も遭遇してきましたが、テレビを友人から借りたという主張を毎回信じることができません。どうして多くの滞納者が、テレビに限ってそうのたまうのでしょうか。どういった経緯で「借りる」のでしょうか。そんな嘘を、海千山千の徴収官が信じると思っているのでしょうか。姑息な嘘はむなしく宙を舞い、結局は押収されることになります。

「法律を作るとき、条文のカッコは二重カッコまで」

六法全書や税務六法を開き、条文を読んでいると、カッコ書きがそこかしこに出てきます。法律に明るい方には共感していただけると思うのですが、なんとも読みづらく、理解するのに時間がかかってしまいます。実は、財務省内では法律を作るときのルールがあって、条文のカッコの中にもう1つカッコを入れるのは許容されるが、さらにもう1つ加えて三重にするのは良くないとされています。理由は、読みづらいから。シンプルな理由は説得力がありますね。

国税局への理解を深め、仕事ぶりを知れば、みなさんが負担した税金がどのように集められ、どのように使われているかが見えてきます。あるあるはまだまだありますので、機会を改めて再び紹介させていただきます。最後におちゃめなあるあるをひとつ。「職員みんなが、携帯の着メロをマルサの女のテーマ『♪ルールルルールルルール』にするので、誰のが鳴っているのか全然わからない」

さんきゅう 倉田(さんきゅう・くらた)
お笑い芸人。1985年、神奈川県生まれ。大学卒業後、東京国税局を経て、芸人になる。劇場でライブ活動を行うほか、税に関するコラムの執筆、講演・セミナーなど活動は多岐にわたる。国税局では主に法人税の税務調査を担当。当時の重加算税対象割合は50%以上だったという。ツイッターID:@thankyoukurata
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