患者には「絶対にやめられない習慣」があるものだ。例えば「タバコはやめられない」のであれば、医者はそれに合わせて治療を提案できる。治療法には選択肢のバリエーションがあるので、「全部お任せします」や「Webサイトで調べたらこの病気だからこの治療をしてくれ」と言われるのは困る。医学的な点については医師のほうがよく知っている。そのことを前提に、医療の専門家に相談に来ましたという姿勢のほうが医者にとっても「任されている」と感じて、やりがいがあるというものだ。望む生き方のイメージが共有できれば、患者にとって不要な治療や不便を強いる治療にならないよう、医師側も想像することができるのだ。
なかには付け届けをしてくる患者もいるが、そもそも医師には確固たる倫理規範があるので、謝礼をいただいたからといって特定の患者を厚待遇することはありえない。医者側は逆に何かを期待されているようで負担を感じてしまう。どうしても感謝の意味で何か渡したいときには、家庭菜園で採れたトマトなど、心のこもった贈り物であれば、ありがたく受け取りやすく、親密にしてもらっているという実感もわく。
対処に困るのは話の長い患者もそうだ。外来で長蛇の列ができているときにはかなり気になる。診療後も世間話などを続けられるのは、むげに断ることもできず、医者はどうすればよいのか悩んでいる場合が多い。別にそれを聞くのが嫌なわけではなく、次の診療時間を気にしているだけなのだ。雑談ならば「今日は10分くらいで終わりますから」と告げてもらえると安心する。こういったことに気を向ければ、医者と患者としてよい関係をつくることができるはずだ。
(構成=山崎テツロウ)