Q3:各総裁候補者の金融政策に対するスタンスは?
本田悦朗駐スイス大使が積極緩和を支持するリフレ派であり、対照的に伊藤隆敏コロンビア大学教授がアグレッシブな金融政策にやや慎重な立場を取っていると見られることを除くと、他の候補者の金融政策に対するスタンスは明らかになっていない。
ただ、現在の日銀執行部である中曽副総裁、雨宮理事については、政策の一貫性を考えると、現行の政策から急転換することは考えにくいだろう。
Q4:財務省出身者と日銀出身者のたすきがけ人事で、次期総裁は日銀出身者に絞られるのではないか?
旧日銀法時代には、財務省(旧大蔵省)出身者と日銀出身者のたすきがけ人事が行われていた。ただ、1998年の新日銀法施行後でも、日銀出身の福井総裁の後、当初、政府は財務省出身の武藤総裁案を国会提示した。民主党の反対で、結局は日銀出身の白川総裁が就任したが、その後任は財務省出身の黒田総裁となった。次は日銀出身者と見ることもできるが、財務省出身者が一度スキップされているため、次も財務省出身者という可能性も排除はできない。
Q5:次期総裁の本命は誰なのか?
筆者は、次の日銀総裁人事の試金石として、7月に任期を迎える木内・佐藤両審議委員の後任人事が重要と考えていた。両審議委員の後任としては、市場対応を意識した人選、あるいはリフレ派からの人選の可能性があり、仮に後任が2名ともリフレ派から選ばれるようであれば、政府の意向はリフレ政策にあると考えられ、リフレ派の本田悦朗駐スイス大使が次期総裁になる可能性は高まる。しかし、実際には、リフレ派の片岡剛士氏、国債市場対応のための人選と見られる鈴木人司氏が審議委員となった。
現実主義の一面を持つ安倍政権は、次の総裁が担う5年の間に国債市場対応がより重要となる可能性を視野に入れたということであろう。そうであるなら、本田駐スイス大使が総裁となる可能性は低下しているのではないか。一方で、本田大使と対極に、アグレッシブな緩和に慎重な伊藤隆敏教授についても、官邸は難色を示すのではないか。伊藤教授は2013年にも総裁の有力候補に名前が挙がったが、当時は国債の大量購入には慎重で、外債購入に前向きなスタンスを示していた。