2011年に行われた調査によると、ギックリ腰の発症後、3カ月以上の痛みが続いたのは、安静にしていた人では3割、できるだけ動いた人ではゼロ。2回以上再発した人は、安静にしていた人で約5割、できるだけ動いた人は2割程度という結果が報告されている。(出典:Matsudaira K et, al . Ind Health 49.2011)

「腰痛には安静」ではなく、「安静にしてはいけない」のだ。

「ドキドキ」から「ワクワク」へ

鍼灸師になって17年、たくさんの腰痛患者さんをみてきた。私のつたない臨床経験からも、急性の腰痛は筋肉を緩めることであっさり治ることを何度も経験している。呼吸もできないほどの激痛が、その場で改善することだってある。

激痛なのに、簡単に治る……この治し方、アレに似ている。そう、「足がツったとき」とおんなじではないか。ふくらはぎがぎゅーっとツったとき、足首をもって反対側に曲げれば一瞬で痛みは消える。ではもし、ギックリ腰も筋肉の一過性の過緊張だとしたら……。

『人生を変える幸せの腰痛学校』(プレジデント社刊、伊藤かよこ著)

──腰を後ろに反らせば治るのでは?

実は私もずっとそう考えていた。だから、次にギックリ腰になったときには腰を反らしてみようとひそかに思っていたのだ。

ギックリ腰になった時に腰を反らしてみる。こんなことで本当にあの激痛がおさまるのかどうか、今度ギックリ腰になったら試してみよう──もしあなたが、そんな気持ちになったとしたらもう大丈夫だ。

「ギックリ腰になったら嫌だなあ」という気持ちから、「ちょっと楽しみだなあ」という気持ちへ。「ドキドキ」から「ワクワク」へ。それは、ギックリ腰への「思いや考え」が変わったということだ。

治したければ、「腰痛」について考えなければいい

世界の腰痛診療ガイドラインの勧告によると、現時点でもっとも信頼度の高い腰痛の治療法は「認知行動療法」と「運動」だ。

──運動ならまだわかるが、「認知」がどう関係するのか?

ここで、よく考えてみよう。

──まず、「痛み」はどこで感じているのか? 

そう、それは「脳」だ。どれだけの大けがをしたとしても、神経がその信号を脳に届けなければ「痛み」は発生しない。脳の「痛み関連領域」の興奮の強さが痛みの強さだとすれば、脳が興奮すればするほど痛みが強いといえる。

脳は「考えたり」「イメージしたり」「予想したり」することでも興奮する。だから、「腰痛」を治したければ、「腰痛」について考えなければいいのだ。