「2017年度末までにゼロにする」。
待機児童問題の解消をそう謳っていたはずの安倍政権が3年先延ばしすることを決めた。なぜ一向に解消のメドが立たないのか。
「需要を見誤っていることが原因です。女性の雇用の急拡大に対応できておらず、そもそも自治体によって待機児童のカウントの仕方がまちまち。正確な実態の把握も不十分です」
ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員はそう指摘する。
地域間格差も大きく、地方では定員割れする認可保育園もある一方で、都市部では用地確保が難しく保育園の開設がなかなか進まない。だが、久我氏はハコモノの議論ばかり先行することに疑問を投げかける。
「政府が企業に数値目標を義務づけるなど男性が育休をもっと取得しやすくする環境を整えるべきです。開設まで何年もかかるハコモノよりも、即効性が期待できます」
依然として女性にばかり育児の負担がかかっていることも問題だ。
「大卒の女性が出産で退職した場合、生涯所得は2億円のマイナスです。それでも正社員の女性の3割が第1子出産を機に退職しています。企業にとっても、せっかく育成した人材を手放すことは大きな痛手です。これが男性正社員だったら企業は黙って見過ごしますか」(久我氏)
(図版作成=大橋昭一)