中期計画達成に向け「人員再編」も実施

今年5月にブラザーは、中期経営計画の最終年度となる18年度の業績目標を「売上収益6850億円、営業利益630億円、営業利益率9.2%」に修正設定した。前期の営業利益は600億円に迫り、営業利益率は9.2%となるなど、一足先に目標を達成したように見える。

※16年に策定した目標数値を、為替レートの見直しなどで修正

だが小池氏は、「前期は運も味方した、本来の実力以上の結果です」と説明し、変革への取り組みを緩める気はない。

「事業構造の組み換えに伴い、人材再配置も行いました。プリンターや複合機などのプリンティング事業から、産業機器や工業用ミシンなどのマシナリー事業に200人規模で配置換えをしたのです。現時点では、再配置で喜ぶ人と戸惑う人がいます。従来よりも小さなグループで、自分の持ち味が発揮できるエンジニアもいますが、産業機器や工業用ミシンでは、プリンターや複合機とは求められるものが異なるため、視野の変更に戸惑うエンジニアもいるからです」

主な狙いは、成長分野に人材を手厚くすることだが、異なる事業に移すことで、職場も当人も"化学反応"が起き、新たな発想が生まれることを期待する。ドミノ事業も、従来の安定した業績の上積みでは満足していない。

「ドミノは大手が参入しにくいニッチな市場を押さえています。現在の課題は、そうした特殊な販路に向けて、ブラザーグループが開発した新商品を次々に供給してあげること。ドミノ事業については、ブラザーの将来の柱と期待しているので、現在の売上高の2倍、利益も1.5倍に拡大したい」

社長に就任して10年。残された課題は、これまで紹介した「事業構造の変革」と「サクセッションプラン(人材開発と後継者育成計画)」だと熱っぽく語る。

事業領域の変化イメージ。新中期戦略より抜粋