佐伯氏と同部調査役の武内雄一氏に、制度を利用した感想を聞いたところ――。

「実は、まだ利用できていないんです。そろそろ……」

と口をそろえた。運用開始から2カ月。制度の利用者をどうやって増やしていくか。特に、どうやって管理職に制度を積極的に利用してもらうかが、同社の課題だという。

日産自動車ダイバーシティディベロップメントオフィス室長の小林千恵氏は、「弊社の社員の7割は、(働き方を変えにくい)機械系エンジニア」と前置きをしたうえで、「だからこそ、在宅勤務制度はあえて、実験部や生産部など、より在宅勤務を取り入れにくい部署から導入しました」と話す。そうすると、ほかの部署が「できない」と言いにくくなるからだ。

「利用者への調査では、98%が、生産性が『向上した』『(在宅勤務でも)変わらない』と回答しています」(小林氏)

「在宅」以外もOK! サテライトは40カ所
――リクルートホールディングス

リクルートホールディングスでは、2016年1月から全社員を対象とし、上限日数がなく、育児や介護などの理由がなくても利用できるリモートワーク制度を導入した。在宅だけでなく、サテライトオフィスなど社外での業務も認めている。育児や介護などを目的とした在宅勤務の規定は以前からあったが、周囲に遠慮して利用しづらい雰囲気があったこと、制度の利用者に男性がほとんどいなかったことが問題だった。

これからの社会では、女性だけでなく男性も、仕事と家事を両立しながら働き続ける必要がある――制度導入には、このように多様な働き方を目指す背景があった。また、ハードワークが習慣化する中で、仕事以外に自分の成長につながる時間をどう確保するのか、ということも課題になっていた。

制度の有効性を検証するために実証実験を行った際の社員アンケートでは、回答者の3割が生産性が上がったと回答。時間を効率よく使う意識が高まり、大学院に通い始めるなど、新しいチャレンジをする者も出てきたという。

現在、不動産会社ザイマックス、東急電鉄と共同でサテライトオフィスの整備を進めており、拠点は40カ所。

(撮影=花村謙太朗、大崎えりや)
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