「普段よりプレッシャー」
この質問に、三菱東京UFJ銀行人事部企画グループ次長の佐伯哲哉氏は「逆ですね」と断言する。
「成果物の提出が義務づけられていますから。前日までにこれをやります、と上司に宣言するため、普段よりプレッシャーがあります」
勤務を開始するときはメールで上司に報告する。ランチやタバコの休憩も同様。また、在宅勤務中は常時、チャットツールが立ち上がるように設定されているため、PCの前を離れていないかどうか、チームメンバーは一目で確認できるという。
同行では通常、上司が部下の勤務状況を、その都度このようにチェックすることはしていないという。しかし、在宅勤務では管理が徹底されているため、これも生産性の向上につながっているそうだ。
では、在宅勤務日を増やせば企業全体の競争力が上がるのか。「そう上手くはいかないだろう」と同部調査役の武内雄一氏は言う。
「現在、在宅勤務を利用できるのは、週1回まで。勤務状況をその都度管理する上司の負荷、管理される部下のストレスから、これ以上増やすのは、現実的に難しいでしょう」
一方、リクルートで制度を活用している平野愛子氏は、「むしろ、働きすぎに注意が必要」だという。同社の評価制度は「ミッショングレード制」と呼ばれる成果主義で、任されるミッションの難易度とその達成度で報酬が決まる。「求められた成果を出せなければ、評価が下がってしまう。だから、サボる、サボらないではなく、限られた時間の中で、いかに効率よく成果を出すかがポイントになる」と平野氏は話す。
「そもそも、働かされている、という感覚がないんです。成果を出してさえいればいいので、例えば自宅で仕事をする合間に買い物に行っても、家事をしても、後ろめたく感じることはありません。ただし、仕事の進め方や生活リズムをつかむまでに、多少慣れが必要かもしれません」