上司に付き合うなら、ランチ3回より飲み会1回が得
さらに取材すると、個人的な「ちょっと一杯、どう?」といった誘いを部下に断られたらいい気持ちはしない、という本音を吐く管理職は少なくない。
食品業の人事部長は、いくら酒席が苦手な人でも、まったく参加しないのは問題だと断言する。
「つきあいが悪い人よりもつきあいがいい人が好まれる。上司も人間ですから、誘っても来ない人よりも来る人のほうに愛着がわきます。つきあいの悪い人は声もかからなくなる。上司も心を許し、当然、いろんな情報も入ってきますし、それを使って仕事がやりやすくなる場合もある。酒につきあわない人に比べて、仕事でも有利なことは間違いない。昼間のランチに3回行くよりも1回飲みに行ったほうが効果はあります」
1回の飲み会は3回分のランチ以上の“効果”がある……。食べるだけでなく、互いに酒を何杯か飲み交わせば「仕事が有利」になるのなら、飲み会のコスパは案外高いと思う人もいるかもしれない。
▼なぜ、上司は夜にならないと腹を割って話せないのか
もちろん上司のグチにつきあうのはごめんだろう。しかし、上層部が秘かに推進している事業計画や取引先企業の役員人事、得意先の担当者とのゴルフの誘いなど有形無形の有益な情報が得られるのも日本企業独特の“飲みニケーション”のメリットだろう。
そもそも社内の“飲みニケーション”はある意味で上司にとって合理的だった。
昼間の仕事がとにかく忙しく、部下との会話に時間を割く余裕もないので「ちょっと君、今晩は空いているかね」と誘って重要な話をした。中には海外赴任の内示を酒席で話す上司もいた。今だったら「そんな重要な話は昼間にしてください」と言いたくなるが、言いにくい話や重要な話は、夜の酒を交えて話すのが企業に限らず、政治の世界でも1つの文化にもなっていた。
だが、今では部下を連れ回す上司も少なくなり、“飲みニケーション”の頻度は明らかに減っている。部下に奢る上司の懐の事情もあるだろうが、残業削減の風潮で部下を早く帰らせて、管理職が遅くまで仕事をしているということもあるだろう。上司も簡単には誘いにくくなっている。
本来なら酒も飲まずに昼間にコミュニケーションを取るべきなのだが、部下と1対1の話す時間をとるのもままならない人もいる。そうなるとじっくり腹を割って話すにはどうしても夜の飲み会ということになる。