早急にすべての事実を公開するべき

中川会長やJA京都は、ダイヤモンド誌が断じるような「守旧派」なのか。興味深い話がある。それは、JAグループ全体では、安倍政権が推進した「TPP」について反対をしていたが、JA京都は前述の京野菜ブランドの輸出など積極的な農業生産をしており、「TPPに反対しない立場」(JA京都担当者)にあったという事実だ。

ダイヤモンド社に対し、「中川泰宏氏を、記事内で、農協改革の『守旧派』と一方的に断じていますが、その根拠はありますか」と問い合わせたところ、「さまざまな取材を基にして、記者が『守旧派』と評価したものです」という回答だった。

JAグループにあって、TPPに反対せず、積極的に京野菜ブランドを世界に輸出しようとする中川氏を「守旧派」と断じる根拠を、ダイヤモンド誌は「さまざまな取材」などという言葉で濁さずに、明らかにすべきではないだろうか。

今回のダイヤモンド誌の記事により、京山の米は多くの店で販売自粛を余儀なくされた。返品や取引停止が相次ぎ、損害は「80億円あった売上は半減、利益損失は10億円になる可能性がある」(JA京都担当者)という。

記事が出た直後の2月15日、ダイヤモンド社に対し、JA京都は損害賠償として3300万円、京山は1100万円を求める民事訴訟を京都地裁に起こしている。4月14日に第1回の裁判が行われたが、JA京都は「ダイヤモンド社からは誰も裁判に出席せず、同社の態度は極めて不誠実なものでありました」とのプレスリリースを出している。

欠席の理由について、ダイヤモンド社に問い合わせたところ、「民事訴訟の初回口頭弁論では、被告代理人弁護士が欠席することは認められております。特に奇異なこととは考えません」と回答があった。

今後、さらなる巨額の賠償訴訟に発展することも予想される。JA京都関係者は「100%勝訴できる」と徹底追求の構えだ。

ダイヤモンド社は、一連の回答について、「これ以上の詳細な質問にはお答えできかねます。すでに訴訟が進行中である点、ご理解を賜われれば幸甚です」と書き添えていた。しかし、現在進行形で損害が広がり、困窮しているのは、JA京都と京山ではないか。

同記事の担当記者は、自社サイトの座談会で「週刊ダイヤモンド編集部のいいところは『面白いネタ至上主義』が徹底していることです」として、「今まで誰もやらなかった独自性のあるネタだったこともあり、雑誌の販売も好調でした」と満足気に振り返っている。

これに対し、記者を知る関係者の見方は冷ややかだ。

「DNA検査の実施など、事実を小出しにするのは示談を有利に進めようとする訴訟戦略なのかもしれません。しかし、記事の内容に自信をもっているのならば、今すぐすべてをオープンにするべきです。事実の解明が遅れて打撃を受けるのは、農業従事者なのですから。ダイヤモンド誌が徹底しているという『面白いネタ至上主義』が、社会正義の枠内での話であると信じたい」(記者を知る農業関係の新聞記者)

事実はどこにあるのか。早急な解明が待たれる。

※ダイヤモンド社の回答は、すべて「株式会社ダイヤモンド社 総務局部長(法務担当)」名義で、2017年4月26日付。

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