同じ研究所の検査で、今度はすべてシロ

一方、ダイヤモンド誌の鼻息は荒い。現在、同誌では記者(正社員)を募集しており、ウェブサイトでは同記事を担当した記者と深澤献編集長らの座談会が掲載されている(4月27日現在。 http://diamond.jp/articles/-/123691 )。深澤編集長が「今年2月の農業特集(17年2月18日号「儲かる農業 2017」)で取り上げたコメの産地疑惑問題は、国会でも議論されるほど様々な反響を呼んだね」と話を振ると、担当記者は「産地偽装を暴く調査報道には、一定のリスクも覚悟しなければいけませんが、それでもゴーサインを出してもらえました。これも面白いネタ至上主義のなせる技です」と答えている。

しかし、この「調査報道」に対し、専門家は首をかしげる。同誌が行ったのは同位体の構成比を調べる「同位体検査」で、産地検査に一般的な「DNA検査」ではなかったからだ。

「ダイヤモンド誌の記事内に掲載された検査の模様とされる写真には、背広を着た男性と思しき人が2人写っていますが、なぜ、白衣を着ていないのか。いちいち突っ込み始めたらきりがありませんが、不思議な写真です」(農作物の検査に詳しい農政関係者)

これについても問い合わせたところ、ダイヤモンド社は、「DNA検査は実施しています。同位体検査結果を含めて、記事全体に、当然ながら自信を持っています」と回答した。この回答に前述の農政関係者は驚きを隠さない。

「なぜ、同位体検査の内容だけを記事にしたのか。もし、一般的なDNA検査をすれば、新潟県産の米は、すごく特徴的な結果が出ることが知られており、記事の信憑性も高まったはず。もし、2つの検査で違った結果が出ているにも関わらず、どちらかをあえて掲載していないのだとすれば、大きな問題に発展する可能性がある」

JA京都は「記事は悪質な捏造」と言わんばかりに徹底抗戦の構えだ。記事掲載直後から特設ホームページを設けて徹底的に反論。さまざまな第三者機関に米を持ち込んで調査し、ことごとく「白」とする結果を得ているという。4月21日には、ダイヤモンド誌が検査を依頼した同位体研究所にて、弁護士立会いのもと、同一銘柄、同一精米日の米を開封し、検査を実施。「10粒検査にて10粒が国産」とする検査結果も公表している。残るは、いまだに公表されていない農林水産省の調査結果を待つばかりだ。

また、ダイヤモンド誌は記事内でJA京都中央会の中川泰宏会長について、「守旧派」と一方的に断じている。中川会長は元衆議院議員。2005年の総選挙では、京都を地盤にしてきた野中広務元官房長官が対立候補を強力に推すなかで、一歩も引かず徹底的な抗争を繰り広げた。京都では「絶対に敵に回したくない男」として知られており、「難しい同和問題もハレーションを意に介せず諸問題にズバズバ切り込んでいった」(自民党京都府連関係者)という豪腕だ。

会長就任後は、京野菜の食事会をベルサイユ宮殿「ヘラクレスの間」で開くなど、改革派のJA会長として辣腕を振るってきた。発想力と実行力を武器に、京野菜のブランド拡大に果たした役割は高く評価されている。一方、京野菜ブランドの品質基準については「取り扱う農作物に対する厳しすぎる基準に根をあげた業者も、実際、複数いる」(JA京都関係者)というほどで、その厳しさは「(中川泰宏氏の名前を音読みした)タイコー規格」と呼ばれるほど恐れられている。