気持ちは熱く判断は冷静に
テレビは、NHKの朝と晩のニュース、民放の深夜枠のニュース番組や週1回の報道番組は録画しておいて、早送りで視聴する。とりわけ注意しているのは、そこに登場するコメンテーターたちの発言だ。なるほどと感心するような鋭いものはチェックして、テークノートしておくのだ。
「このようにして獲得した情報は、いうまでもなく玉石混交。それらを取捨選択する必要があるわけですが、最後の決め手は直感だと思います。ですから、それを研ぎ澄まさなければなりません。私が意識しているのは、論理をつかさどる左脳と感性を生み出す右脳をバランス良く使うことです。人の出会いにしてもそうでしょう。当面の利害だけにとらわれず、自分を成長させてくれる相手を見極めることが大切です」
よく、物事をなすに際しては、“クールヘッド・バット・ウオームハート”であるべきだといわれる。もちろん、 目的に対しての気持ちは熱くて、純粋でないといけない。だが、いざ動く際には、冷静に判断するのが当然だ。そこでは、あまり周囲を気にしすぎてもいけないのだろう。むしろ、したたかなぐらいでいいのかもしれない。
まったく休む暇もなさそうな熊谷氏だが、やはり1日、1週間のなかではオンだけでなくオフもつくり出す。まず、睡眠時間だが、意外にも、最低6時間は取るように心がけているという。仕事が深夜までおよび、早朝から地方に移動ともなれば、なかなかそうはいかない日もあるが、やはり、頭がクリアでないと、すぐれたアイデアはひらめかないからである。
まれに1、2日の余裕ができると、温泉に行くのが、熊谷氏の楽しみになっている。都内の日帰りの湯や温泉地で「ぼーっ」とする時間は、何物にも代えがたい。そんなときは、頭のなかを無にして、日ごろの疲れを癒やす。そうして心身をリフレッシュさせ、再びビジネスの戦場に臨んでいく。
1989年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2007年大和総研入社。15年より現職。著書に『パッシング・チャイナ』など多数。