海苔は捨てずに佃煮にすればいい
お盆の時期に最も多い依頼は、実家に家族全員がそろっているタイミングで家の片づけをしてほしい、というものだ。
正直に言うと、お盆は処理場が休みなので複数の依頼を受けるのは難しいのだが、「どうしても」というお客さまが多い。いろいろな意味で、実家の片づけは親だけでも子供だけでも難しいということだろう。
私は地獄としか言いようのない壮絶な室内を何度も見てきた。盆と正月の年2回しか帰省しない人は、実家がとんでもない状況になってしまう危険性を認識しておいたほうがいいだろう。
一見、何も問題がないようでも、「その部屋は散らかっているから入らないで」などと親が言い出したら要注意だ。その部屋は物で埋め尽くされている可能性が非常に高い。
実家がゴミ屋敷ならぬ物屋敷になってしまうのは、時間の問題といっていいだろう。
老親が暮らす実家がそうした状態になってしまう理由は、いくつかある。
第一は、親が認知症を発症している場合だ。私は医者ではないから正確なことは言えないが、認知症を発症している老人は被害感情が強い場合が多いように思う。子供さんから依頼を受けて片づけに行っても、「あんた、何を盗みにきたの?」といった反応をされてしまう。
揚げ句の果てに、「あんた、ここに置いてあった物、盗んだでしょう」などとあらぬ疑いをかけられて、警察を呼ばれたことさえある。
あるとき、子供さんから「一戸建てにひとりで住んでいる母が軽い認知症になったので同居したい。部屋を片づけてほしい」と依頼されたことがあった。
子供さんとしては、借家の家賃を浮かし、孫の面倒を見てもらいつつ、母親の介護をする算段だったのだろうが、現場に行ってみると5つある部屋すべてが、天井まで届く荷物で埋め尽くされていた。8割が食材だ。
「この四万十川の海苔、賞味期限切れだから捨てましょうね」
「佃煮にすれば大丈夫よ」
万事この調子で、頑として処分を拒否されてしまう。ネズミや虫がわくと言っても「ノー」。こうなっては、もう手遅れ。我々ができることにも限界があり、同居の計画は見直す以外になくなってしまった。