お詫びは誠意を示すに尽きる。そのためには礼儀正しさが相手に伝わる服装が不可欠。

まず、チャコールグレーのスーツに白いシャツを基調とする。もちろん光沢のあるスーツや柄物の派手なネクタイはNG。シャツとパンツにはしっかりとアイロンをかけ、黒い靴とともに礼儀を表す。

一見、冠婚葬祭にも通用しそうだが、黒ずくめはかえって相手の気を悪くするとポージングディレクターの中井信之氏は言う。

「喪服のようになってしまっては、二度と会いたくないという格好です。要は、謝って仲直りしたいわけですから、礼を重んじながらも、いきすぎないことが大事です」

この日ばかりは、時計やアクセサリーにも細心の注意を配りたい。豪華な時計や、女性の揺れるほど大きなイヤリングなどは、相手の怒りの炎に油を注ぎかねない。時計もアクセサリーも、質素なものが好ましい。

マナーで気をつけたいのが、出されたお茶に決して口をつけないことだ。「お詫びに行くとずいぶんと待たされるケースもあります。謝る前の緊張感から目の前にお茶が出されると、つい手が出てしまいそうですが、後から謝罪の相手が入室したとき、空の茶碗を見たら、こいつ本当に反省しているのかと思われてしまいます。手をつけないのが賢明でしょう」(中井氏)

謝るときの基本姿勢は、背を丸めて小さくなること。みじめさを醸し出すのだ。背筋を伸ばした姿勢からビシッと頭を下げて潔く謝るよりも効き目があると中井氏。

「欧米人は罪の文化、日本人は恥の文化。謝ることが恥ずかしいという感情を見せたほうがすんなりと受け入れられるのです」

お詫びの訪問で難しいのが手土産の持参だ。謝罪の気持ちを込めたいが、かといって、モノで釣るのかと思われると逆効果。

日本バトラー&コンシェルジュの代表で、『世界No.1執事が教える“信頼の法則”』の著書がある新井直之氏はこうアドバイスする。

「私がお仕えしている大富豪のみなさまも、謝罪の手土産には気をつけています。最初のお詫びのときには持参せず、和解が成立したときにお渡しするのが一般的です」

くれぐれも渡すタイミングは間違えないようにしたい。

また、品選びも慎重に行いたい。「大富豪がお詫びの手土産に選ぶのは、重さを感じる消えもの(食品)です。自分がどれだけ重い気持ちで謝罪したかという思いを、相手に伝えたいからです」(新井氏)

具体的には、老舗の羊羹やあんみつ、ゼリー、あるいは高級メロンなどだ。逆に、お煎餅やクッキーなど目方の軽いものは、やはり謝罪の気持ちも軽いのではないかと疑われてしまうので、お詫びの手土産にはふさわしくない。

包み紙にも注意が必要。最大限の配慮の気持ちを表したいのだから、名店や百貨店の包装紙であるべきだ。間違っても、キオスクやコンビニで調達しないように。