――サイコパスで有名な人は?
ブックツアーでドイツに行ったとき、読者からアドルフ・ヒトラーのことを聞かれました。確かにヒトラーはサイコパス度が高い。でも読者が驚いたのは、ヒトラーに劣らずサイコパス度が高いのが、ウィンストン・チャーチルであることです。首相や大統領に立候補するような人は、かなり自信家で、ナルシシストが多いので、もともとサイコパス度も非常に高いのです。首相や大統領という仕事は、さまざまな脅威、独裁者と対峙していかなければなりませんし、絶えず、難しい決断を迫られる。ひとつ間違えると国際問題に発展してしまうような決断です。
戦闘機のパイロットもサイコパス度が非常に高い。ただ彼らは敵機を追撃するというミッションを果たすために、そのことだけに集中しすぎて戦闘機の燃料が切れかかっていることに気づかず、最後は燃料切れで墜落して死んでしまうこともあります。ですからサイコパス度が高いことは諸刃の剣です。バランスが重要です。
――サイコパス度とIQは相関関係にあるのでしょうか。
それはいささか神話です。『羊たちの沈黙』に出てくるハンニバル・レクターは、天才サイコパスの典型ですが、これはフィクションです。実際はサイコパスにおけるIQは一般人のIQと同じです。私が研究のためにインタビューしたサイコパスの人の中には非常にIQが高い人もいましたが、そうではない人もいました。
たちが悪いのは、頭の悪いサイコパスです。特にバイオレントな人であれば即刑務所に入れられるような悪事を働いてしまう。知性と衝動性は関係していることがわかっています。知性が高ければ高いほど、満足したり、喜んだりすることを遅らせることができますが、知性が高くない人はより衝動的な行動をとる傾向にあるからです。
ですから、知性が高いこと、サイコパス度が高いこと、そして向いている専門職についている、という3つの条件がうまく組み合わさると、集中力が発揮できて、成功に導かれます。