トランプ大統領はサイコパス度が高い

――今度アメリカ大統領になったドナルド・トランプのサイコパス度は高いでしょうか。

私は昨秋“Scientific American Mind”誌に、ドナルド・トランプ、ヒラリー・クリントン、テッド・クルーズ、バーニー・サンダーズの4人を分析した論文を発表しました。その中でドナルド・トランプはサイコパス度がかなり高かった。社会的影響力、恐れを知らない度合い、ストレス耐性、自己中心性、感情移入をしない度合い、服従しない力、無責任さ、冷酷さ、という8つの要素で分析しました。

その結果、ドナルド・トランプはサイコパス度が非常に高いことがわかりましたが、それは驚きではありません。彼は選挙に勝った剣闘士です。そのことを忘れてはいけません。次から次へと大統領令に署名していますが、その決断は日本を含め、諸外国に甚大な影響を与えます。

――サイコパスではない人が、サイコパスと同じように集中力を養うことはできますか。

今世界中で流行っているマインドフルネス・ムーブメントがまさにそれです。サイコパスの人は自分に関係のない情報を遮断し、一点に集中することが自然にできますが、一般の人でもマインドフルネスを実行すればできるようになります。

マインドフルネス哲学のリーダーの一人とオックスフォード大学で会って話しました。彼は「サイコパス的なマインドフルネス」と「ノーマルなマインドフルネス」の違いを説明してくれました。「ノーマルなマインドフルネス」というのは、「瞬間を味わう」(savor the moment)ことを教えられますが、サイコパス的なマインドフルネスというのは瞬間を味わうのではなく、その瞬間を貪り(devour)、できるだけ自分のためになることを最大限得ようとするのです。その違いは大きい。

――サイコパスではない人がサイコパスの集中力を得たいなら、一般的なマインドフルネスだけでなく、「サイコパス的なマインドフルネス」(利益になるのであれば、集中する)も意識すればいいということでしょうか。

そうです。サイコパスは利益にならないことには集中力を発揮しません。その場合の集中力は一般の人以下かもしれません。

――今は集中しづらい時代ですか?

ソーシャル・メディア、スマホなどはすべて集中力を妨げるものです。欧米のような先進国に住んでいる人が24時間で脳内に取り入れる情報の量は、中世イギリスの田舎に住んでいた人が生涯にわたって取り入れる情報の量と同じです。現代人は膨大な情報にさらされています。ですから、今ほど集中力が重要である時代はないのではないでしょうか。そしてサイコパスの人は圧倒的に有利な立場にあります。彼らは集中力を妨げる、膨大な情報があってもそれに影響されず、集中することができるからです。

株式市場で成功する人にはサイコパスの人が多いですが、それは重要な情報だけを取り入れてパニックにならず、冷静さを保ち、集中することができるからです。金融界にサイコパス度が非常に高い人が多いことは別に驚きではないのです。

Q.「サイコパス」とは?
A.
「共感しない」「自己中心的」「攻撃的」「平然とうそをつく」「道徳心の欠如」「他人を操る」などの特徴を持つ人格を指す心理学用語。サイコパス的要素は、多かれ少なかれ誰にでもあり、サイコパスであるかについては明確な境界線はない。
Q.「マインドフルネス」とは?
A.「今、この瞬間」に意識的に目を向けることで脳を休める、ストレス対処法。「瞑想」などを通じて体現できる。これにより一時的に脳の機能を停止させることができ、脳の疲れを取り、「集中力アップ」や「パフォーマンスの向上」につながる。
オックスフォード大学 実験心理学部 主任研究員
ケヴィン・ダットン

1967年、英ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学のセント・エドマンズ・カレッジのファラデー科学・宗教研究所を経て、現職。英国王立医学協会およびサイコパシー研究学会会員。著書に『サイコパス 秘められた能力』(NHK出版)、『 サイコパスに学ぶ成功法則』(アンディ・マクナブとの共著、竹書房)。
(斎藤久美=撮影)
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