【三浦】安保法制を通したときに、「米軍が日本から撤退するかもしれない」という脅しを使わなかったのは安倍政権の賢明な判断だったと思うし、それが自民党という政党の良き伝統であると思います。しかし、トランプ大統領の登場で「米軍撤退」という脅しが向こうから“見える化”されてしまった。トランプ政権と対峙していくうえで、安倍政権の安全保障政策は過不足なく十分だと思われますか。あるいは自分ならこうするという追加的な修正はありますか?

【石破】安全保障政策は常に改善されていくべきもので、「これが完璧」ということはないのだと思っています。第2次安倍改造内閣が発足する前に、安全保障法制担当大臣の打診をいただいたことがありました。安保法制をわかりやすく説明せよ、ということだったのかもしれません。過去にも有事法制や、イラク特措法、あるいはテロ特措法の延長など、当初は反対の多かった法制の説明を行ってきた経緯もありました。イラク特措法も、最初は国民の支持率は約30%でしたが、最終的に可決の頃には約60%となりました。

大統領令を乱発して「選挙公約」を次々に実行、ツイッターでつぶやき続けるトランプ氏に、日本は翻弄されている。(写真=時事通信フォト)

打診をいただいて、総理に、「私は集団的自衛権は現憲法上もフルに容認されると考えており、自民党としてもそのように党議決定しております。集団的自衛権をどのように行使するかは、国家安全保障基本法で厳しく節度を持って定めるべきもので、憲法上の制約ではないと考えますが如何でしょうか」とお尋ねしました。安倍総理は「憲法上、容認しうる集団的自衛権は今回の安保法制までで、これ以上は憲法改正が必要だ」とおっしゃった。総理がそう決められた以上はそれが内閣の方針ということです。

【三浦】安保法制のあり方について、安倍首相とは考え方が違う。

【石破】目指す方向は同じでも、論理の立て方に違いがあった。ですから安全保障法制担当大臣はお引き受けできませんでした。仮に野党から「石破大臣、あなたは集団的自衛権を憲法上、これ以上行使できないと思っていますか?」と問われて、閣内不一致とされるのは困りますので。

【三浦】あとは嘘つくしかない(笑)。

【石破】嘘つくわけにはいきませんから。