安倍政権を取り巻く世界情勢が、逆風に転じている。「ポスト安倍」候補の一人、石破茂前地方創生担当相と、気鋭の国際政治学者、三浦瑠麗氏が外交・安保から経済政策まで縦横無尽に語り合った。全3回の対談連載、中編をお届けする――。

金融政策と財政出動はいつまでも続かない

【三浦】安倍政権の高支持率の要因としてアベノミクスに対する一定の評価があります。仮に同じ政党内で政権交代するにしても、経済政策に何らかの違いを出さなければ求心力になりえないと私は思いますが、「イシバノミクス」はどのようなものになりそうですか?

【石破】そんな言葉聞いたことない(笑)。話が迂遠で恐縮ですが、私の政治家としての原体験は平成2(1990)年の2回目の当選なんです。当時は海部内閣で、竹下(登)総理が消費税と引き換えにご自分の内閣を差し出したあと、宇野(宗佑)内閣、海部内閣が引き継いで消費税を組み込んだ予算を国会に初めて提出していた。

【三浦】消費税の是非が選挙の争点になったわけですね。

【石破】選挙スタッフや県議会議員の一部からは、「悪いことは言わんから、オレは自民党だが消費税は反対と言って選挙しろ。それしかおまえが通る道はない」と言われたんです。何しろ、昭和61(1986)年の1回目の当選時は中選挙区制下で定数4の圧倒的最下位。危うく落選するところでしたから。でも私は「嘘を言ってまで当選するなら落ちたほうがいい」と言って、消費税賛成をぶち上げた。そのときの財政は今よりはるかによかった。

でも竹下総理はこれから先の安定的な社会保障財源として消費税は必要だと。竹下総理の本当に偉いところの一つですが、「誰もわかってくれないなら辻立ちしてでも」と言って、実際に全国で辻立ちして消費税の必要性を説いて回られたんです。私はいたく感動して、消費増税を訴えて、最高得票で当選させていただいた。それが原点なんです。だから私は、今の政治に決定権のない次の世代に勝手にツケを回すなんて、そもそも許されていいはずがないとずっと思っています。

【三浦】安倍政権の4年間、財政規律は軽んじられてきたと言わざるをえません。消費増税も2度先送りしましたし。

【石破】軽んじてきたわけではないと思いますが、デフレ脱却を第一に掲げた以上、金融緩和と財政出動はせざるをえませんでした。安倍総裁が政権を奪還したときもその後の参議院選挙も私は幹事長として選挙に責任を負いました。ですから安倍政権の政策には私も責任を負っているわけです。大胆な金融政策、機動的な財政出動でモラトリアム期間をつくる。その間に構造改革をはじめとする成長戦略を実行して、日本経済の失速を食い止めなければならない。つまりそのための時間をください、ということ。しかし、大胆な金融政策も機動的な財政出動もいつまでも続くものではないのだから、その間にいかに体質改善をするかにかかっています。本来は日本の経済力にふさわしい金利が付くべきだし、円はふさわしいレートで適正に決まるべきです。日経平均だけで日本経済の実力は語られるべきではないと私は思っています。