自民党を揺るがした「千代田ショック」

トランプ米大統領の誕生で難しい舵取りを迫られる安倍政権だが、それにも増して頭を悩ませているのが「小池旋風」だ。2月5日投開票された東京都千代田区長選は小池百合子都知事が全面支援した現職の石川雅己氏が圧勝。自民党が推薦した新人候補の与謝野信氏(与謝野馨元官房長官の甥)は大敗を喫した。そして政府・自民党に衝撃を与えたのは投票率と自民党支持層の動向である。投票率は前回区長選から11ポイント超も上昇し、自民党を支持する人々の多くが党推薦候補ではなく、「小池印」に投票した現実がマスコミ各社の調査から明らかになった。

小池都知事が応援した石川雅己氏は圧勝。5選を果たした。(時事通信フォト=写真)

7月に小池氏が「天王山」と位置付ける都議選は千代田区長選以上に注目が集まると見られており、投票率が同様に伸長すれば「小池印」が大躍進するのは間違いない。今秋の衆院解散・総選挙を模索する安倍政権は「政治カレンダー」の見直しを余儀なくされている。

今回の「千代田ショック」が示唆する事実は、2つある。1つは昨年夏の都知事選で見られたように小池人気は各政党の支持層から支えられているということだ。安倍政権はいまだ5割超の支持率を維持し、自民党の政党支持率も3割以上で推移しているが、実際の選挙結果はその数字通りに結びついていない。就任後100日のハネムーン期間を終え、小池氏の人気は下降線をたどる見方が大勢を占めていたが、年が明けてもその勢いに陰りは見られず、就任半年を超えても高い人気を誇っている。

マスコミ各社の調査によれば、千代田区長選における小池氏の支持率は88%に達し(NHK)、自民党支持層の約6割は小池氏が支援した石川氏に投票した。都議選でも同様の結果になれば、自民党には大きな痛手となる。自民党東京都連の井上信治政調会長は記者団に「区長選の影響が出ないように都議選をしっかり頑張る」と語ったが、自民党関係者は「都議会自民党が完全に否定されているという事実を深刻に受け止めない限り、壊滅的なダメージを受けるだろう」と声をひそめる。