「販路の進化」4つのポイント

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することだ。

進化経営の詳しいプロセスは、『価値づくり進化経営 http://www.jmca.jp/prod/2433』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(9)販路の進化に取り組んだ傳來工房の事例から、企業が取り組むべき新たな販路の開拓を通じて、経営を進化させていくポイントを4点抽出する。

(1)競合他社が参入できないように、当初から参入障壁を設ける

大手エクステリアメーカーなどの競合企業が参入できないように、同社は当初より熟練した職人による手づくりの要素を商品に組み込み、さらにフィリピン工場で製造することでコスト競争力を高め、当初から参入障壁を設けた。こうした取り組みにより、現在も競合品は登場していない。

(2)エリアNo.1の提案型エクステリア専門店への直販体制を堅持する

ディーズガーデンを市場に投入してから、大手エクステリアメーカー・ホームセンター・有力問屋などから販売したいという申し出が相次いだが、同社では顧客への提案力と施工力を持つエクステリア専門店での直販体制を堅持している。中間流通を省くことで、同社と販売店は高い収益性を確保でき、両社の協力関係が強固になる背景がここにある。

(3)量産よりも価値重視で取り組む

同社の商品は製造に手間が掛かるため、量産は難しい面がある。しかし生産数量が限られる点を逆に付加価値に変え、価値を売る戦略を実践している。

(4)同社の営業活動は環境整備を徹底し、会社見学によるファンづくりと信頼関係づくりを重視している

同社では環境整備活動(礼儀・規律・清潔・整頓・安全・衛生)に長年取り組み、年間を通じて工場見学や環境整備の研修に全国の特約店から多くの人たちが参加している(2016年度年間約500名)。同社の会社見学を通じて、特約店からはこれまで業界にはなかった高い企業文化とモノづくりに取り組む真摯な姿勢が評価され、同社のファンづくりと信頼関係の構築に結実している。

老舗企業が時代を超えて求められる存在であり続ける秘訣とは、絶えず自社を進化させる取り組みにある。自社商品の価値を守り高収益性を確保するには、他社に依存するのではなく、自社で販路を構築し運用していくことだ。

高収益企業は卓越したモノづくりに加え、販路の開拓にも力を注いでいる。

酒井光雄(さかい・みつお)
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。
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