生産財メーカーの悩みは自社の実力が「見えない」こと
消費財や耐久消費財メーカーは顧客に完成品(最終製品)を見せることができる。だが生産財メーカーは完成品をつくるための部品を製造しているため、自社の技術力や製品力を「目に見える」ように提示することが難しい。
「見える化」のためによく行われるのは、展示会で製品サンプルを見せることだ。メーカーで研究開発や試作を行う専門家であれば、その部品の用途と精度は理解できる。ただし、分野の異なる人には製品の価値を伝えきれず、関心を持ってもらうのは難しい。また守秘義務契約があるため、過去に手掛けた部品の現物を、展示会などに出せないケースもある。
こうした制約がある中でも、好業績を上げている生産財メーカーは、自社の技術力と優位性を理解してもらいながら既存顧客を深耕し、新規顧客の開拓に取り組んでいる。
生産財メーカーに必要なコミュニケーション
浅野(浅野誠代表)は自動車メーカー向けを中心に試作用の金型や試作板金製造組み立て事業を手掛けている。群馬県伊勢崎市に本社と本社工場、静岡県掛川市に静岡工場、さらに京都市に射出成形用金型の設計製作を手掛ける京都工場を持つ。社員数337人、売上高63億3000万円(2016年3月現在)の生産財メーカーだ。
同社は自動車レースの最高峰であるF1カーの部品製造にも関与し、試作用金型の分野を中心に事業を展開している。他の生産財メーカーにはない同社の力量を理解してもらいながら既存取引先からの仕事を増やし、その一方で新たな取引先を開拓する効果的なコミュニケーション方法をかねてから模索していた。
そんな中で彼らが見出したテーマが、自社の技術力を誰の目にも理解してもらえるように「技術と能力を見える化」 することだった。