事業への影響がブレーキとなる!?

制約関数については、トランプが「一流の国際ビジネスマン」であり、一流の事業家でもあることが最大の制約要因になるものと考えられる。既に大統領の要職とトランプ事業との利益相反の問題が指摘されている。仮にどのような会計的・税務的・法的なストラクチャーが採用されたとしても、トランプがトランプ事業の権益者であることには変わりはないからだ。

トランプの大統領としての言動や行動によって、地政学的なリスクが顕在化するような展開となった場合には、トランプ事業の不動産プロパティーがテロの直接のターゲットとなったり、当該リスクのために厳重な警備が同資産に対してなされ、不動産運営や集客等にも支障をきたしたりすること(つまりは資産価値の毀損)もあると予測される。

このような展開となった場合には、トランプの事業への影響可能性が一定のブレーキとして作用することで、外交や安全保障上の行動には一定の規律が働いてくるものであると予想される。

なお、「ファースト・ドーター」としてトランプをサポートし、今後もさまざまな活躍が期待されているトランプの長女・イヴァンカは、制約関数という意味では、トランプに対してボラティリティーの大きさ(変動の激しさ)を食い止める役目を果たしていくことが大いに期待される。ちなみにイヴァンカのファッションブランドは、現在、大阪か名古屋の百貨店・ターミナル駅ビル出店を第1号店として日本進出の最終段階を迎えているとの業界情報もある。2017年はトランプとともにイヴァンカが日本でも大きな注目を集めることを予測として付け加えておきたい。

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、オランダABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)、東京医科歯科大学医療経営学客員講師、グロービス・マネジメント・スクール講師等を歴任。著書に『ミッションの経営学』など多数。
http://www.rikkyo.ac.jp/sindaigakuin/bizsite/professor/
(写真=ロイター/アフロ)
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