では、猫の場合はどうなのか。
「猫は、穀物蔵のネズミを捕ってもらおうと敷地に放っただけですから。人に対応する必要がなかったのでしょう」
ということは、猫に人の仕事を援助する役目を持たせていたら、犬のように飼い主に従順になったのだろうか。
「可能性はなくはないですが、猫はもともと単独生活を好む生き物。つまり自分の意思で行動するのが好きな生き物なんです。対して犬は社会性が高い動物ですから、他者と協調するというのが得意だった。だから人を援助する役割を与えられたのでしょう」
よく飼い主が悲しい顔をしていると犬が慰めにきてくれると言うが、それも犬の社会性からきているのだろうか。
「犬は人の感情を読み取ります。でも、飼い主が悲しい顔をしているから慰めにきてくれるというのはたぶん幻想です。待っていてもご飯が出てこないから、催促をしにきただけかもしれない。普通の犬は飼い主がピンチになっても助けにきませんし、助けを呼んでもくれません。これは猫も同じです」
飼い主の顔色を読み取るのは、むしろ行動の判断材料にするためだという。
「扇風機に細長い紙をつけて回すと、紙がぴらぴらして怖いですよね。そんなとき、犬は飼い主の顔を見ます。飼い主が怖そうにしていると行かない。にこにこしていると行く。つまり、人の行動を手掛かりに行動する能力があるということです。犬ほどではないですが、猫もできます」
よくテレビ番組に計算できる天才犬が登場するが、それは飼い主の反応を見て、正解の数だけ吠えているのだろうと藤田氏は言う。では、猫は?
「認知テストの結果は犬も猫もほぼ一緒です。でも飼い主への依存度が犬のほうが高いんです」
認知能力では猫も負けていないのに、計算できる猫が出てこないのは、飼い主への依存度が低いからというわけか。
ちなみに死んだ飼い主を待ち続けた忠犬ハチ公の話も怪しいという。
「毎日渋谷の駅に行くのが習慣だったとか、行くとおいしいものがもらえた、とかそんな理由じゃないかと……」
犬も猫も、したたかであることは間違いないようだ。