1カ月働いたらいくらになんだ?

深夜帯ばっかり働くとして……
1625円×8時間×20日=26万円!!

え!?

 

もう1個バイト掛け持ちしたら
十分暮らせる給料になるじゃないか!

 

あほ!

 

え?

 

あほあほあほあほ!

 

あほあほ言いながら、右手からスミヤンが出てきた!!
やっぱり夢じゃなかったのか!!!

 

お前あれだろ、バイトもいいかなぁなんて思ってんだろう!

 

え?
そうだけど、なんでわかったの?

 

わたしゃね、お金のことを考えている人がわかるのさ!

今の日本はバイト代はたしかに上がってるんだ。
だけど、正社員の給料はアベノミクスの前から上がってない。

 

出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査をもとに編集部作成

やっぱりバイトの方がいいじゃないか!
なんでバイト代は上がるのに正社員の給料は上がらないの?

 

バイト代が上がっているのは
バイト代は需要と供給で決まるからだ!

 

需要と供給?

 

うむ

 

ボヨーン

なんか始まった!

 

アルバイトをしたい学生が5人、
アルバイトを雇いたい店が5店あるとしよう。
バイトは、一店一人ずつとする。

時給1500円なら働きたい学生が5人、雇いたい店が3店。
時給1000円なら働きたい学生が4人、雇いたい店が4店。
時給500円なら働きたい学生が3人、雇いたい店が5店だとする。

今、アルバイトの時給が1500円だとすると、
3組のペアができて、二人の学生が「余る」ことになる。

 

余った学生は
「自分なら1499円で働くから、他の学生を雇わずに自分を雇って」
「いや、自分なら1498円で働きます」と競争する。
 次第に時給が下がっていき、1000円になったところで、皆が満足する。
つまり、4組のペアが出来て、それぞれ取引するからだ。

バイトの時給が500円だった時も同様のことが起きて
やはり1000円になる。

これをグラフで表すとこうなる!

 

赤色の曲線は、アルバイトを雇いたい店を表す「需要曲線」だ。
時給が低くなるにつれて、雇いたい店が増えていく。

青色の曲線は、働きたい学生を表す「供給曲線」だ。
時給が高くなるにつれて、働きたい学生が増えていく。

ある商品の「価格」、この場合で言えばアルバイトの時給は
「需要曲線」と「供給曲線」が
交差するところで決まるのだ!

アルバイトを雇いたい店が増えると、
「うちは他店より高い時給を払うから、
他店をやめて、うちに来て下さい」という店が増えるので、
時給が上がっていくのだ。

だが……正社員は違う!

正社員の給料は何で決まるの!?

 

あらかじめ決められた「賃金カーブ」だよ。

 

賃金カーブ?

 

そう! そのカーブとは「年功序列」だ!
キミら正社員の給料は、年齢で決まっているのだ!
年功序列は終身雇用とセットで
「日本的経営」の大きな特徴だ!

出典:厚生労働省 H27年度賃金構造基本統計調査をもとに編集部作成

年功序列! 終身雇用!
聞いたことある!

 

私たちは学校を卒業してから定年まで 同じ企業に勤める
これを「終身雇用」という。

年功序列と終身雇用の
最大の特徴は何かわかるかね?

 

食いっぱぐれがない!

 

甘い 甘すぎる……
年功序列と終身雇用の特徴は……
釣った魚にエサはやらない!

 

え!?

 

終身雇用は労働者にメリットが実に多いから
労働者が辞める心配がない。
だから景気がよくなったとしても、
定期昇給以上に賃上げをする必要などないのだ。

 

いくらメリットが多いからって
ひどいじゃないか!
エサくれよ! エサ!

 

どんなメリットがあるか。
まず 失業のリスクが少ない。
そして 若いときは給料が低いものの
なにかと物入りな中高年になると給料がグンと高くなる。

 

まぁたしかに そのほうが人生の計画が
立てやすいかも。
(だから 若いときに会社を辞めちゃうと損なんだな……)

 

会社にとっても終身雇用のメリットは大きい。

 

会社側のメリット?
そんなのどうでもいい! エサくれ!

 

お金と時間をかけて、じっくり社員を教育できる。
もし会社の業績が苦しなったら
賃上げをガマンしてもらって乗り切ることができる。
終身雇用でなければ 会社と社員が
家族のように一致団結することなどできん。

 

か……家族!!!!

 

そう、日本的経営では
会社と社員は家族なのである!

 

家族最高~!!
アイラブ終身雇用~!!

 

それでも、キミはまだ
アルバイトがうらやましいのかね!

 

いえ!!!
オレは終身雇用と年功序列でいくっす!
家族、大事っすから! マジで!

 

あ! 牛丼がきた!
いっただっきまーす!

 

むむ……ごくり。

 

おじさんも食べたいの?
食べさせてやろうか?

 

わ、わたしはキミ以外には、見えないのだよ。
へ、変な眼で見られるぞ!
……ごくり。

 

そう。じゃあいいか。
いっただきまーす。

 

え!?
ぐぬぬぬぬ……!

 

労働力不足(供給不足)によってバイトの時給は上がっていて
うらやましい面はある。

でも オレは終身雇用と年功序列をベースとして
会社という家族に守られている。

どちらかというと オレには家族のほうが
性に合っているな。

 

 
監修 塚崎公義
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。
(監修=塚崎公義(久留米大学教授) 作画=室木おすし [第1回テーマ=日本的経営、需要と供給])
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