日本の場合、それを担う技術者・開発者・デザイナーが忙しすぎたり、あるいは職人気質になって社内の殻にこもっていることも多いようです。しかし、それは「知の探索」を怠ることであり、結果として中長期的なイノベーションが停滞してしまうのです。
「両利きの経営」を機能させるためには何が必要か。もちろん、経営者自らが「知の探索」に挑み続けることが重要です。たとえば予算面で「知の探索」と「知の深化」のバランスを取り、両者の間で異なるルールや評価基準をとることを厭わないことが求められます。
最強の相棒を見つける方法
さらに組織で重要なのが、「チャラ男」と「根回しオヤジ」がコンビを組むことだと私は考えています。
どういうことでしょうか。人のつながりには、強弱があります。たとえば親友同士は「強いつながり」ですし、ただの知り合いは「弱いつながり」です。私たちは「強いつながり」を重視しがちですが、実は新しい知を生み出すには、弱いつながりのほうが適している、ということが経営学の研究で示されています。
人間のつながりをネットワークとして見ると、弱いつながりのほうが簡単につくれるので、遠くに伸びやすい。遠くに伸びたら、多様な情報が効率的に届くのです。この弱いつながりをつくるのは、好奇心旺盛で行動力がある「チャラ男」タイプの人材です。
しかし、それだけでは組織は成り立ちません。生み出されたクリエーティブな萌芽を、実現しなければいけない。新規性がある企画でも、上長に上がるほど稟議書が通らないことはよくあります。そこで組織内で深い人間関係を築いて、橋渡しができる「根回しオヤジ」が存在感を示すのです。
「チャラ男」と「根回しオヤジ」をうまくペアリングして、イノベーションを起こす。最新の経営学から見ると、このベストカップルこそ日本企業に求められているといえるでしょう。