2015年1月に施行された相続税の基礎控除の引き下げや税率強化によって、課税対象者は増加している。東京都国税局管内(東京、神奈川、千葉、山梨)で、相続税の申告が必要な人を試算したところ、10年の約21%から、現在の税制では44.5%に増加するという結果が出ている(税理士法人レガシィ調べ)。

納税者が増えることが予想される相続で揉めずに、期限内に申告をするためには、事前にどのような準備をしておけばいいのだろうか。これまで多くの相続に立ち会ってきた大山さんは、遺言書を作ることを勧めている。

たとえば、資産のほとんどが農地といったケースでは分割が難しく、後継者になる子供に遺産を集中させざるをえないこともある。

「遺産を平等に分割できないようなときも、その理由も合わせて、心を込めた遺言書を残しておくと、残された家族は納得するものです。揉めないと思っていても、親の遺産のことで子供たちが意見を交わすと、どうしてもギスギスしがちです。遺言書は、その話し合いにレールを敷いてあげるもの。亡くなった人が相続に関する方針を示すことで、揉め事は少なくなります」

遺言書は、手書きでも認められるが、内容や記載方法に間違いがあると無効になってしまう。トラブルを避けるには、公証人役場などで「公正証書遺言」を作っておくほうが安心だ。

また、相続税の知識がないと、「遺言書を書いたものの、納税資金が捻出できない」「賃貸物件の収支を見ないで遺産分割をしてしまった」など、実態に合わない遺言書を作成してしまうこともある。こうした失敗を避けるために、専門家に相談することも検討してみよう。とくに相続は税理士の得意分野によって、節税効果に大きな違いが出ることがある。争いごとを避けて相続を有利に進めるには、相続税の実務に慣れている税理士の知恵を借りたい。相続税の知識が豊富な税理士なら、土地の評価減の特例、生命保険や不動産を活用した節税対策などもアドバイスしてくれる。