適切な「話のリリースポイント」で金が転がり込む

ここでは、リリースポイントという考えが大事になってくる。

野球では、ピッチャーが威力のあるスピードボールを投げるためには、リリースポイントが大事だといわれる。リリースとは、「放す」という意味で、ピッチャーがどの瞬間で手から球を離すかで、ボールの速さやコントロールが決まってくる。このリリースポイントを間違ってしまっては、どんなに力のある投手でも、打者から空振りをとるようなすばらしい球を投げることはできない。

先の悪質業者はどうか。

勧誘に困っている状況を知ったうえで、「あなたの商品を購入した情報が漏れていて、これから先も続々、悪質業者がやってくる」と不安を煽る言葉を投げかける。そして「私たちの商品を買えば、業者の勧誘を止められます」「あなたを悪質業者から守れます」というのだ。

この「止められる」「守れます」トークを、最初の段階で言ったとしても大して心に響く言葉にはならないだろう。だが、きっちり不安を煽るステップを踏んでから言葉を投げかけるので、相手の心にズドーンと突き刺さることになる。

ビジネスにおいても同じであろう。その時の相手の状況や話をする順番など、会話におけるリリースポイントを考えながら、言葉を投げかけることが大事だ。

これまで私は勧誘現場で、業者から様々なクロージング(営業活動などにおいて顧客と契約を締結すること)を受けてきたが、業者は契約させようとするために決まって「あなたを絶対に満足させる自信があります」などと言ってくる。

彼らの決め台詞を聞きながら思うことがある。それは、私は潜入取材の意識をもっているので判を押さないが、もし自分が一般客で商品への必要性を多少でも感じていれば、サインをしてしまう可能性があるということだ。